2008年12月22日(月)~27日(土)
メンバー:CL妹尾
「冬山素人は八ヶ岳でも登ってろ。」という先輩方の熱い(?)激励(ヤジ?)を受け、
まずは八ヶ岳西面で登攀の技術向上を目指し、単独で向かう。
22日(月) 多摩動物公園6:20~12:00茅野駅~美濃戸口14:45~赤岳鉱泉18:00
八王子で、出勤前の盛山サンからアイススクリューを受け取り、電車で一路茅野へ。
小淵沢あたりで天気が悪くなり、雨が降ってる始末。まあ今日はアプローチのみなので
急がず焦らず。これから5日間は丸々粗食なので、茅野駅で昼食をガッツリ食べて
ノンビリ13:50バス出発。
平日だが年末が近いからか、はたまた休日に挟まれた日だからか、でかいザックが
チラホラ。でもバス内にヤマ関係は私一人でした。
美濃戸口で冬靴を履き、いざ出発。登攀用具+幕営装備+食料9日分(含む後半分)で
80Lザックはパンパン、重いオモイ。最近は先輩の車に乗せてもらう機会が多く、
久しぶりの美濃戸口からの歩き。時間帯も遅めで誰にも会わない。
ヘッデンを出すころ、ようやく赤岳鉱泉に到着。さあ、明日からがんばろう。
23日(火) 赤岳鉱泉7:30~ジョウゴ沢F1 8:00~F6 9:30~硫黄岳10:30
~地蔵尾根分岐13:00~赤岳鉱泉15:15~行者小屋16:00
今日は初日ということで、軽くウォーミオングアップ的にジョウゴ沢へ。
前回小川サンに連れてきて貰ったが、稜線には抜けなかったのでとりあえず
硫黄岳目指して出発。F1~F5まで前回登っていることもあり、問題なし。
F6はルート図には25mとあるが、ちょっと埋まってる?20mぐらいで
下部5mが垂直、あとはナメた傾斜の緩い部分が続く。これを抜けて
終わりかなと思ったが、硫黄岳の方向に進路を変えると雪面の下はハイマツで、
ラッセル?部分が随所にあり意外と時間がかかる。
硫黄岳に11:00前到着と、時間的に早く天気も良いので、地蔵尾根まで
稜線プチ縦走とする。実は私、横岳周辺の稜線はほとんど歩いたことが無かったので
今後の下降路偵察の意味でも一度歩きたかった。
八ヶ岳特有の強風がキツかったが、一通り各ルートの終了点等の位置関係を
確認しながら歩き、地蔵尾根を下降。明日登る赤岳主稜の取り付きでも偵察しようかと
思ったが、夕方から若干吹雪いてきて、嫌な感じを残しつつ本日の業務を終了。
明日から登るルートを考えて、BCを行者小屋に移すため、一度赤岳鉱泉に戻り、
デポを回収して行者小屋へ移動する。
24日(水) 行者小屋5:45~赤岳主稜取り付き6:30
~赤岳頂上11:00~12:30行者小屋
さあ、本日は今回のメインディッシュの1本、赤岳主稜。
昨日取り付きが吹雪で確認できず、不安なまま出発。
幸いにも天気はばっちり、体調もいい、装備に不足なし。あらゆる撤退の言い訳は消滅。
これで登れなければ本人の技量の問題以外何物でもない。おそらく文三郎道の
このあたりから取り付きへの分岐だろうという場所でもまだ暗く、昨夜の降雪でトレースも
よく見えない。20分ほど待つと、主稜全体が見えて取り付きだろうと思われるチムニーを
発見。よく見るとそこまでうっすらトレースも見えた。まずは第一関門突破。
後続・先行パーティーなし。
1P目はチムニー状凹角(Ⅳ級)を登る。もちろんロープを出し、朝一番ということで慎重に登る。2P目も慎重を期してロープを出す。所々トレースらしきものがあり、ホッとする。
こういうところが今の実力を如実に現しているのだろう、情けない。
いよいよ核心のピッチ。前半のリッジから後半のリッジへ乗り移る部分凹角。直登はプロテクションが取りづらそうだったので、若干左へトラバースしたが、この3手ぐらいが微妙に悪かった。残置は極力使わずナッツを丁寧に決めていく。ここを越えるとあとは傾斜の緩い岩稜帯が続き、すぐに頂上へ抜けられた。
11:00早い時間に抜けられ天気も快晴。とりあえずは及第点か。
下りも気を抜かず文三郎道を行く。途中、朝日?に照らされる赤岳主稜を見る。
「マァ、ちょっとはがんばったじゃないか。」そんな風にいわれた気がした。
昼過ぎに行者小屋に到着、時間的には他のルートにいけなくも無いが
ノンビリ休むことにする。
夕方中山尾根の展望台へ。夕日に照らされた横岳西壁が壮厳だった。
25日(木) 行者小屋6:00~中山尾根取り付き6:45~上部岩壁取り付き7:45
~稜線10:00~行者小屋11:30
昨夕、通りすがりの方と話した折に今日明日と天気悪いという情報を聞いた。
早朝、その通りに雲が広がっているし、いまにも降り出しそうだ。
しかし本日は中山尾根、まだまだ冬山素人は冬壁に飢えている。
出発から1時間もせずに取り付きに到着。やはり八ヶ岳、トレースがあり迷うはずがない。
下部岩壁(Ⅲ級)は空身で登り、バックロープで荷物を引き上げる作戦。
これでこの部分は30分で片付いた。天候が悪くなるのは明らかなので、
安全・確実を最優先にしつつ、いかに速く登るかを意識する。
簡単な草付き・雪稜を登り、いよいよ上部岩壁へ。ここら辺でいよいよ吹雪いてくる。
1年前の石尊稜はこの程度でおそらく何もできずにただ先輩についていくので精一杯だった。
この1年で自分は成長できたのだろうか・・・などと考えながら、心のどこかで
この状況を楽しみ、求めている自分を感じた。よし、大丈夫、いける。
ロープを出し、確実にナッツをきめていく。凍っているといっても脆いクラックもあり、
慎重にクラックを選び、時にはクラックの中を掃除する。
下部岩壁とはまったく違い当然時間がかかり、なかなか進まない。
核心の2~3手は確実に進むためオーバーグローブをはずす。
アルパインで墜落は許されないが、ソロは尚更だ。
でも、この山行のあとにいく三峰川岳沢はおそらく自分にとって
あくまで先輩についていくだけの山行だろう。今の自分には
華麗なアイスのリードも、いぶし銀のルートファインディングも出来ない。
せいぜい歩荷とラッセルぐらいだ。
だからこそ、今このたった独りの泥臭い登攀に幸せを感じる。
それがたかだか2~3PのⅣ級程度であってもだ。
稜線は風が強く、視界は30mほど。雪まみれのギア・ロープを片付け
長居は無用、さっさと地蔵尾根へ向かう。地蔵尾根の出だしは去年先輩方もてこずっていたが、ご多分に漏れず自分も視界が悪い中てこずり、一度上り返す。視界が悪いときはむやみに動かず、じっと耐える。視界が一瞬開き、少し離れたところに鎖を発見した。安堵する。11:00、疲れてはいるが無事評者小屋へ。天気はドンドン悪化。
午後はひたすら昼寝。寒いが同時に充実感にも包まれ、変な感じ。
26日(金) 行者小屋8:00~三叉峰ルンゼ取り付き11:00
~行者小屋12:00~美濃戸口17:30
朝、天気は相変わらず悪い。深夜よりは回復したようだが、かなりの積雪があったようで
めぼしいトレースは完全に消えている。天候や疲労の度合いを勘案しても、今日は
たいした登攀はできないだろう。ゆっくり準備して、三叉峰ルンゼのF1ぐらいを簡単に
登ろうか、でも外は雪・風もまだまだあるし・・・
いや、まつど岳人トレース保存委員会(笑)としては八ヶ岳でトレースを刻めるという貴重な
機会を逃すわけには行かない、ということで出発を決定。
途中までは石尊稜へのアプローチを辿る。トレースの跡はうっすらわかるものの、
時には膝~腰まで埋まる。しかも一度、小同心ルンゼに間違って入ってしまい
時間だけがドンドン過ぎる。ようやくルンゼを特定して、いよいよ感動のF1とご対面・・・
と思いきや、埋まってました・・・・・。(たぶんF1だと思う。)
例えそれがF1でなかったとしても、今日はそれほど気合が入っていないし、
こんな状態で取り付く方が危ない。今回はこれで終わろう。
行者小屋への途中、晴れ間が見えてきた。テルモスのうすいお茶を空に掲げて一杯。
「ありがとう」
行者小屋でBCの撤収。内側の結露がホンとに酷い。削り落とすと自分が真っ白。冬山行くと本当に装備の良し悪しが露呈する。でも財布がなァ・・・。
今日中に美濃戸まで下る。5日間の粗食のせいか、まだ4人×4食分の食料があるせいか荷物がとても重たい。ペースはまったく進まず。
それにしても手の冷えが酷い。凍傷ではないが、寒い。やっぱ食事を改善した方が
いいかなと思ってたら、赤岳山荘の気温計で-11℃。後で知ったが、この日前後が
今年一番の冷え込みだったらしい。手も冷えるわけだ。
赤岳山荘の前でダウンを着ようとするも手がかじかんで四苦八苦。
それを中から見ていた赤岳山荘のオバちゃんに声をかけて頂いた。
するとオバちゃんが、これから車で下山する地元の方に頼んで私を乗せていただくように
計らってくれた。本当に感謝、よほどみすぼらしい背中に見えたのか(苦笑)
本当にありがとうございます、今はコーヒー1杯のお金も落とせませんが、
いつか必ずここに泊まってお金を落としますので・・・と心で詫びて、
親切な地元の方の暖かい車で美濃戸口へ。美濃戸口手前で幕営、しかしホンとサムイ。
27日(土) 美濃戸口7:30~茅野駅11:00~松澤組と合流25:30
本日は茅野駅で松サン達と深夜に合流する予定。
つまりそれまでに茅野駅にいればいいワケ。そこで貧乏人は思いつくのです。
「バス代900円もったいない」と。歩きましょう、茅野駅まで。
地図を見ても4時間ぐらいかなと歩き出す。幸い天気は快晴(でも寒い)。
しかし2時間ぐらい歩くと、これまでの疲労がぶり返し辛くなる。
しかし、世の中まだまだ捨てたものではありませんでした!通りすがりの
ペンション経営というご夫婦(+犬1匹)が、みすぼらしい80Lザックを見かねて
茅野まで送っていただき、無事午前中に茅野駅に到着。
世の皆様の御厚意が無ければ私山に登れませんでしょう、本当に感謝感激です。
茅野駅前のスーパーでエグイ量のラーメンやらコロッケやら大量に食い、
ようやく前座は終了、いよいよ本番の三峰沢・岳沢へと向かいます。
(岳沢の報告は別項で・・・)