2月16(土)・17(日)、19(火)~21日(木) CL:妹尾
16日(土) 前夜発:多摩動物公園駅~日野春駅~(徒歩)~横手駒ケ岳神社~笹の平合流点~刃渡り手前(幕営)
修論発表会・卒業旅行・引越し等、怒涛の一週間を終え、いよいよ山に戻ってこれた。
やはりこの時期なら甲斐駒・黒戸尾根だろう。技術的には問題ないが2200mの標高差はなまった足腰にはもってこいのはず。
修論の手直しが思いの他長引き、ギリギリ終電で日野春駅へ。時間は0:30。
満天の星空と遠くに南アルプスのシルエットがはっきり見える。気温は-1℃、思いのほか寒くない。
ここから登山口の横手駒ケ岳神社まで徒歩3時間、体力トレーニングにはもってこいだ。
(ウソです、タクシー代なんて僕の辞書には・・・)
月が明るいが、甲斐駒の稜線付近のみ雲が広がっている。風が強いのか・・・など思いツツ歩く。
連夜のイベントでなるほど、体力の衰えは否定できない。
4:30に横手駒ケ岳神社に到着。さあ、一気に登ろう。久しぶりの興奮と不安、悪くない。
登りだしてしばらくはトレースの跡(?)があるが、踝ぐらいまで埋まる。なまった足には十分なダメージ、なかなかスピードが上がらない。途中から全くトレース無、無雪期なら1時間程度で通過する地点を1時間40分。雪の有無を差し引いても明らかに遅い。
笹の平合流点手前の斜面のトラバースにかなりてこずった。北面で雪が深く、微妙にルートミスも重なり、しかも休憩中にウトウト40分ぐらい居眠りしてしまった。(前日まで2日間の引越しで寝不足。)
結局笹の平には昼過ぎにようやく到着。ここからもトレースの跡らしきものはあるがほとんど埋まっている。
ワカンを使うもスピードは上がらず。膝上ぐらいまでツボ足。16:00ぐらいにようやく刃渡り手前までたどり着くが1日目で最低5合目までたどり着かないと頂上は踏めない。この時点で敗退決定・・・。
(結論。2月のこのルートはオールラッセル・単独なら体力があることを前提で3日は必要、あと体調も。
前夜発とかタクシー使えば2日でもいけるか。)
17日(日) 刃渡り手前~横手駒ケ岳神社~日野春駅~多摩動物公園
朝、のんびり起床。皮肉な事に、ここ1週間では一番熟睡できた。9:00出発。
下山中もやはりモヤモヤする。いろいろあるんだろうが、それでもこの結果は悲しい。
これではダメだろう、今年年末に海外遠征を考えている。これからはひとつひとつの山が勝負となる気構えが必要だろう。明日は大学で所要があるが、明後日からは何とかなる。再度挑戦せねば。
帰路、横手から日野春駅まで歩いていると途中地元の方に車に乗せて頂けた。
これで何度目だろうか。いつも誰かに助けられる、だからこそ全力で登らないといけない。それが
ダメな(しかも貧乏な)山屋の端くれの最低限の義務だ。
19日(火) 多摩動物公園駅~日野春駅~(徒歩)~横手駒ケ岳神社~笹の平合流点~刃渡り~五合目小屋跡~七丈小屋(幕営)
今、日野春駅に立っている、時間は0:30。不思議な感じだ、36時間ぐらい前にここに居たからだろうか。
前回より寒さが肌にピリピリ来るのは寒さだけではない(かな?)、きっと「必ず登頂」という言葉が頭にあるからか。
前回同様、日野春駅から3時間。風が強い。不安はいつものことだがやはり慣れることは無い。
登山口には4:00到着。前回、自分が作ったトレースを歩く。やはり歩きやすく、体力も少し戻っているのかペースは悪くない。前回苦戦した笹の平手前の北面トラバースは斜面上部からのスノーシャワーで完全に埋まり、やはり苦戦したが、笹の平には10時過ぎに到着。長い急斜面を経て刃渡り、五合目小屋跡まで進む。
時間は15:00、今日は七丈小屋で幕営できそうだ。途中でテントを発見。ああ、これでノートレースでの登頂はダメか、とガッカリだったが、少し進むと2人組みが引き返してきた。どうやら撤退のようだ、ほっ。
七丈小屋に17:00到着。行動時間は日野春駅からカウントして15時間くらい、かなりヘロヘロ。
何度か声をかけるとようやく小屋のオジサン登場。「ここ2週間ぐらい誰も登ってないからラッセル大変だよ。」と意地悪そうに笑う。いやいや、それが目的ですから。いやでも気合が入る。
20日(水) 七丈小屋~甲斐駒ヶ岳頂上~七丈小屋~五合目小屋~刃渡り~笹の平手前(幕営)
夜、風が強い。かなり冷え込んでいる、寝袋の中に入れておいた容器の水が凍りかけている。
冬山の、特に独りでのこの時間はいつも惨めな思考が頭をよぎる。行動しだすとそれらは薄れていくのも知っているがやはり慣れない。7:00発。去年かなりラッセルで苦労した出だしの斜面だが、今年はワカン装着でなんとかリズムよく進める。相変わらず風は強い。
八合目を過ぎたあたりから急なリッジが始まる。しかもグズグズな雪でなかなか進まない。
やや傾斜のある雪壁を登り、頂上が見え始めるとあとはクラストした斜面を進む。体力的には楽だが、滑落するとかなりの距離を落ちるかもしれない。ましてや独り、緊張する。
途中、ヘリが2度ほど付近を飛んでいた、手を振ってみる。このころになると風は止み、快晴。
一歩一歩あえぎながらもようやく頂上。11:15。
少しホッとする。目標が「登頂」だったからだ。さあ、下山だ。
七丈小屋でデポしたテント類をパッキングして14:00。ここから垂直のクサリ・梯子場が連続する。
しかし、ここでやってしまった。絶対にコケてはいけない所でコケてしまった。アイゼンが何かに引っ掛かって、梯子場と梯子場の間の斜面を前のめりに倒れた。「滑落停止姿勢を!」と頭によぎったが、その体制に入る前に5~7m滑り落ちたところで斜面が90度に右折しており、その曲がり角の雪の吹き溜まりみたいな場所に頭から突っ込んで偶然止まった。そのまま止まらなければ潅木こそ生えているが切り立った崖。
滑った直後はやや放心状態、時間が経つにつれ事の重大さに背筋が寒くなった。
明らかに注意散漫だったことは否めない。
そこからは恐る恐る梯子場を通過し、なんとか刃渡りを通過。降りれるところまで降りようと笹の平手前まで到着。遠くに甲府の街明かりが見える。緊張が解けたのかどっと疲れた。幕営。
21日(木) 笹の平手前~横手駒ケ岳神社~韮崎駅~多摩動物公園
朝、早めに出発して、まだ片付いていない引越し直後の部屋を整理できたらと思ったがやはり寝坊した。
9:00出発。駆けるように下山する。横手からはバスがあるが、途中の売店で何か買って食べたいと思いしばらく歩くと軽トラのおじさんに声を掛けられる。韮崎まで乗っけてくれるとの事だった。
このルートの帰り道はほぼ毎回地元の方に乗せていただいている。疲れた体と痩せた財布にはことのほか有難い。
振り返ると甲斐駒がズーんとそびえている。
韮崎では浮いたお金で大内さんに土産を買い、一路新居へ。次は北岳・池山吊尾根か。