2007年12月29日(土)~12月30日(日) 1泊2日
[メンバー] CL:盛山(記)、日置、妹尾
[山域名] 八ヶ岳/硫黄岳周辺 [ルート] 大同心ルンゼ大滝、石尊稜
久々に参加になる日置隊員を歓迎すべく山行を計画するも、天気は大荒れの模様。
安全策をとり八ヶ岳西面へ行くも、ブリザードの中7時間に及ぶ登攀になるとは。
下山が遅れ、心配とご迷惑をお掛けした事をお詫び致します。
記録
12/29
美濃戸(赤岳山荘)11:00-13:00赤岳鉱泉14:00?-15:00大同心ルンゼ大滝16:00――17:00赤岳鉱泉
雨の中、八ヶ岳に向かう。今日は二つ玉の低気圧だ。分かっていたが非常に憂鬱だ。
計画では、大同心の大滝と正面壁雲稜を目指すが、まず無理だろう。
赤岳山荘に着くも雪ではなく雨。残念なスタートだ。
雨が止むのを待ち、赤岳鉱泉へ上がりテント設営。
なんとか時間もあるので、大同心大滝へ。まだかよ、といい加減、嫌になるくらいに大滝に着く。なかなかデカイ。3段に別れており、最下部は傾斜70度くらいか、中段と上段が垂壁といったとこか。上部の抜け口がかなり薄くなっており、難しそうだ。
協議の結果、取りあえず下段~中段を日置リードで登る事に。
バイルの刺さりはよいが、気温が高い為か氷が脆い。
それでも久々のはずの日置隊員はなんなくリードをしていた。彼にしては、珍しくランナウトしており、気合を感じる登りであった。山に行けない欲求不満の為か・・・。
さて上段は登ってみると、びしゃびしゃだ。叩いてみると崩れて水が出てくる。
こんなところを登るのは自殺行為なので、懸垂で下山開始。
大同心ルンゼの大滝は、段が別れており、確実に確保支点が取れるので、安心して登れる。
しっかり凍った時に登りに来たいものだ。
12/30
赤岳鉱泉6:00-7:30石尊稜取付-8:00下部岩壁-上部岩壁-15:00稜線-16:30地蔵尾根-18:30?赤岳鉱泉19:00-20:30美濃戸(赤岳山荘)
前日から雪が降っており、大同心は却下。
それでも全天候型クライマーを目指す為に、ルートへ取り付くべく石尊稜へ。
この日は先行パーティーが1組3名のみ。石尊稜の取り付きで出会う。
本日の作戦としては、妹尾隊員が雪稜デビューなので、下部岩壁を盛山、上部岩壁を日置隊員リードで行く事に。
下部岩壁取り付きまで、コンテとアンザイレンをミックスして登る。妹尾隊員も始めての割には危な気なく問題なさそうだ。
すぐに下部岩壁に着く。先行パーティーが取り付いているが、隣の確保支点が空いており、そちらから登る事に。
さてどうっすかな~とルートを見るも、凹角を詰めるか、微妙な草付のリッジかといったところ。雪がついており、スタンス、ホールド、残置ハーケンは良く分からない。
一見簡単そうな凹角に取り付くが、すぐに厳しいことがわかる。スタンスが拾えないし、残置ハーケンどころか、打つとこすら見当たらず。
支点を取らず、とても突っ込める壁の状態ではないので、草付のリッジ上を登る。
こちらもかなりシビア。草付だかクラックだか良く分からないところに、アングルを打ち込み登るも、すぐに行き詰る。とてもじゃないが、ハーケンを打ちながら進むのは精神衛生上よろしくない。微妙な岩角でランナーをとり、凹角をトラバースし、上部の樹林帯を目指す。
途中、なんとかハーケンをもう一本打てたが、あとは気合だった。
「たぶんこことあそこをスタンスとして繋いで…」と分かるが、物凄い怖い。
岩が見えていないから、置いたアイゼンがどこまでかかっているのかよくわからないし、バイルも同じような状況。不安定な以上、過度に加重は掛けられず、そ~と動く。
立ち木に手が届いた時は、心の中でガッツポーズ。
グレード的にはⅢだが、体感的にⅤを超えておりました。
先行パーティーは、残置ハーケンが見つからない為、撤退していったようだ。
この先はコンテで行くも、すぐに急登が出てくる。残置ハーケンもあったので、コンテからそのままビレーに切り替えてもらう。ちなみに残置ハーケンを見つけたのはここと上部岩壁の2箇所のみだった。
この先は全てアンザイレンで行く事に。
日置・盛山のつるべに妹尾隊員を挟む形で登る。
上部岩壁に着くまでには天候がかなり悪化しており、ホワイトアウト+スノーシャワーと言ったところか。登るにつれ稜線の厳しい風になっていくのがつらい。
なにより視界が利かないので、あとどのくらいなのかが、さっぱりつかめない。
おそらく雪がここまで無いときは難なく登れる岩が全て強敵に変わっている。
登っている時は、どこからが上部岩壁かもはっきりと分からなかった。
上部岩壁に入った時は、かなり疲労困憊。
さっさと抜けないと状況は悪くなる一方なので、リードをやらせて頂く。
岩壁のあからさまな凹角を登る。
この辺から、実は絶好調でした。
アドレナリン出まくりで、ルート取りも完璧でした。
風が弱まる時にルートを見定めて、一気に登る。岩の中で風が吹き荒れると、とてもじゃないが目を開けていられない。こんな状況でよく登ったな~と我ながら感心します。
でもそのときは「これぞ冬季登攀だ」とにやけていました。完全にイッチャテル人ですね。
吹き荒れる岩稜でのビレーは本当に辛かった。
確保支点が取れず、狭いテラスでのボディービレー。しかも登ってきたルートを考えると中途半端な体勢では不味いこともよくわかっていた。
このビレーで指がやられた。完全に中指の感覚がなくなってしまった。顔も鼻の辺りがなんだかやばそう。
まだ岩が続くので、続くピッチもリードをやる。
自分でも驚くくらい動きがよい。リッジを登り、岩壁の下を潜り込む様に左に巻いて行き、上部に出る。急に傾斜がなくなり、視界は相変わらず真っ白なのになぜか「稜線だ、終わりだ」とわかった。
ここから1ピッチリードしてもらい、次の最後のリードで、登山道に出た。
燃え尽きました。
しかし試練はここで終わりではなかった。
登山道に出たのはよいがホワイトアウトでわからん。トレースも消えてしまっているぞ。
横岳周辺は西面へ東面へとトラバースが多いが、その道が完全に消えている。
稜線上に進むと絶壁にぶち当たりやり直し。
心が挫けそうだった。もう日暮れが近いことも分かっていた。
本気でビバーグを検討に入るが、その場合、明日はさらに天気が荒れる可能性大なので、1日のビバーグで済まない可能性が高い…すげー嫌だ。
幸い隊員の体力と気力は続いているようなので、動ける限り動く。
稜線上に行けば、必ず地蔵尾根には着くはずだとルートを探しながら歩きつづけ、道標とお地蔵様に会えた時ようやく終わった~と。
しかし、まだなんです。地蔵尾根の下山路も完全埋没。ところどころ鎖があるもののルートはどこ?という状況。
相変わらず風は強くまともに視界が利かない。特に谷からの風が下から雪を巻き上げ最悪の状況。
下降尾根を間違えたら、目も当てられないので、ひたすらルートファインデング。正確には鎖探し。視界がない以上、確実な目印を繋いで行くしかない状況だった。
下れば下った分だけ格段に状況はよくなり、途中から鎖、トレースが出てくる。
ここまで来れば一安心だが、一気に樹林帯まで高度を下げる。
樹林帯に入ってしまえば、そこは別世界。
トレースを滑る様に降りて行き、テント撤収、フラフラと下山。
長い一日であった。
ここまで厳しい八ヶ岳は初めてだった。
今回の山行は間違えなく2007年のベストクライミングであった。
反省点
① 想像以上に悪天候では登攀が厳しく、時間がかかった。
② 初心者を連れて行くには、無理がある内容だった。
③ 雪稜なのでザイル1本で行ったが、撤退も考え、2本持っていくべきであった。
④ 「登山道=もう安心」というわけではない。道に対する甘えがあった。