9月27日、28日 ノジ(記)、エリーさん
27日
この日は偵察。早朝高尾発。6時30分のバスで芦安から広河原へ。白根御池にテントを張って偵察に出かける。bガリー大滝を登り、尾根を越えてcガリーを超え、下部の2ピッチの取りつきを確認。cガリーは浮石だらけでアリジゴクのようで怖かった。ここまで見たんだからもうダイジョブだろう。しかしここまでせっかく背負ってきたロープをもってテントに戻り、明日朝、またロープを背負ってくるのはしんどいよね、ということでロープを岩の陰に念入りに隠し、デポして帰幕。
この日大樺沢から見上げるバットレスは紅葉で本当に美しかった。明日は暗いうちに出発してしまい、この美しい姿を見ることはできなかろう、としみじみと眺める。タカネナデシコ、フウロソウ、トリカブトやシャジンの花がまだ残っている。
28日
2時10分にテントを出たものの、暗さのあまりbガリーへの分岐を見過ごしてしまい、30分ほどもロスしてしまう。それでも、ロープを背負わないですんだ分、足取りは軽く、4時20分には取りつき到着、4時30分には登り始める。続々と後続が来ていたが、まあ一応トップで取りついた。5時30分ころには大滝を抜け、確か6時40分頃、四尾根本体の取りつきに辿り着く。ここで、ビバークして先行していたパーティに追いつくと同時に、わらわらと後続が到着する。焦るな、焦るな、と自分に言い聞かせても、それでも後ろのパーティのおっちゃんの早くしろ、と言わんばかりの話し方に気が気ではない。(なおこのおっちゃんは途中で私たちを追い越そうとしたが、結局追い越さず終始後ろにいて私たちをせかし続けてくれた)。焦るとミスをする、焦らない、焦らないと自分に言い聞かせながら登る。
若干の懸垂順番待ちのあと、マッチ箱のコル到着が8時30分ころ。ここにこの時間に着けば、もう、抜けられないということは有るまい。この時点で、ノジはやっと緊張から解放され、ほっとした。ここからやっと、四尾根を楽しむ余裕ができた。クライミング自体は特に難しくないし、素晴らしい高度感と景色、広がる青空に富士山、最高のロケーションである。楽しいリッジを超えて、最終ピッチのチムニーに到着。先行が苦労している、ふむ、ここが噂の核心か。しかし取りついてみるとどうということもない、あっさり抜ける。10時半、登攀終了。
終了点から山頂までが結構長い、とも聞いていたのだけれど、これもまたあっさり抜けた。11時、北岳の山頂に立った。
やっと電波が入る、と同時に、友人たちから安否を気遣うメールがどっと入る。振り返れば御嶽が、きのこ雲のような噴煙を上げている。秋晴れの、素晴らしい登山日和に、ヤマに命を奪われていった同好の士を思うと言葉もない。
山頂で休憩を取り、下山開始。御池でテントを撤収し、15時10分広河原発のバスで芦安へ。温泉に入って帰京。
総括。
偵察をよくした(そのため、大滝から先は全く迷わず取りつきに直行できた)こと、ロープをデポしたことがうまく効きました。クライミング自体はさほど難しくなかった。ただ長いピッチ数と後続がかけてくる精神的圧力を跳ね返すだけの図太さが必要だった。
噴煙を上げる御嶽が指呼の間のように見える山頂で、亡くなった方と遺族、懸命に救助しているであろう方々を思うと、登攀の成功を喜ぶのも気が引けるような思いだったが、それでも、念願の四尾根をやり遂げた喜びは大きかった。金色に輝くダケカンバの紅葉の中を気持ちよく下山することができた。
私たちが出発する、本当に直前の直前まで、細やかなアドバイスをくださった松さん、盛山さん、かっきー、暖かく励ましてくださったナミオさん、そのほか皆様、本当にありがとうございました。ご心配をかけてしまい申し訳ありませんでした。早く、安心して送り出していただけるようになります。