2008年8月6日(水)~29日(金) (表記時間はすべて現地時間、キルギスの時差は-2H)
メンバー:妹尾(まつど岳人倶楽部)、Y野井Y史・T子、O内N樹・K子 計5人
カナダ修行を終え、いよいよ今夏のメインイベント、キルギスタン・Karavshin谷の
アルパインクライミングが始まる。ご同行させていただくのは我がアパートの
大家さんでもあるO内夫妻と、ヤマを志す者なら説明不要のY野井夫妻である。
8月6日(水) 成田空港13:00~Moscow・Sheremetyevo空港(ロシア)17:00
朝、コンビニに別件の荷物をもって行ったりバタバタしながらO内夫妻と6:30出発。
朝の通勤ラッシュに巨大ザックは心苦しい・・・。9:00前に到着、搭乗手続きへ。
ここで最初のトラブル。ライターは機内に1個のみ可なので(預け荷物内は不可)
ザックの中のライターをバカ正直に出そうとして、スタッフが目ざとくコンロを見つけてしまう。
燃料はもちろん入ってないが、ガソリンの匂いがかすかにするのでアウト・・・らしい。
後でY野井夫妻曰く、「一日乾かせば大丈夫」らしいのだが、甘かった。
宅急便で実家に送ろうにも、空港内の宅配便にも拒否される。
結局、帰国までの23日間手荷物預かりでしめて7200円ナリ~・・・泣・・・
これで終わりではなかった。まあ二つ目はこちらに非はないけど場合によっては
成田から出発すらできない事態も考えられた・・・恐ろしい。
なんと、前日に送られてきた航空チケットの名前が1文字間違ってるのだ!
しかも出国管理官(?)に指摘されてはじめて気づいた。
「まあ、たぶん大丈夫だと思うけどね、苦笑」
管理官のこの言葉を信じて、とにかく強制送還に怯えながら出発。
この旅どうなるのでしょう?
10時間近いフライトで経由地のモスクワ着。
ここで5時間ほど待ち。名前の間違いも取り立ててトラブルもなく
一路キルギスへ。
8月7日(木) Moscow・Sheremetyevo空港(ロシア)6日23:00~
Bishkek・Manas International空港(キルギスタン)6:00~Osh20:00
夜遅くにモスクワを出発、5時間ほどのフライトでキルギスの首都ビシュケクへ。
飛行機が着陸した瞬間、何故か一斉に拍手喝采。おいおい、そんな危険なフライトなの?
ビシュケクに寝ぼけ眼で到着、先に来ていたY野井夫妻が空港でお出迎え。お疲れでごんす。
本日はひたすら車移動。現地エージェントの手配した車で(スタッフ3人)ひたすらOshへ。
車の中ではY野井夫妻がキルギスに来る前に登っていたハンテングリの話が面白い。
12時間のドライブを経てようやく本日の宿へ到着。地方の裕福層が自宅を民宿にしてる宿。
僕の部屋の隣はリビングで持ち主一家がTV見てて出ずらい・・・。でも夜寝るときに
オーナーのおっちゃんとウォッカ呑みながら北京五輪のサッカーみる。キルギスはレスリングが強いとかなんとかお互い片言の英語で酔っ払いながら夜は更ける・・・。
8月8日(金) Osh8:00~Batken14:00~カラフシン谷入口17:00
本日はカラフシン谷への車両進入可能な場所まで車移動。
8:00起床、朝食。この宿はメンバー全員に概ね好評でした。
途中、市場で買い物などして延々ドライブ。ここら辺は砂漠に近い荒野・丘陵が延々続く。
時節、検問がありパスポートチェック。まあ一応中央アジアですし、何年か前にはクライマーが拉致されたとかされないとかの話も聞いたことあるし・・・等思い出して、うかつに写真撮ってしまう。
はい、お約束。軍人にカメラ没収~。写真消去させられました。クライミング前にオイタは
禁物、反省しましょう。本日のキャンプ地に近づくと途中からキルギス軍のジープに乗り換える。検問所とちがいこちらの軍人は愛想がいい。まあこっちは副業のお客だからかな?
さらに4~50分ほど車で谷の奥へ。広い民家の庭先にテント。
近くの岩場でボルダーするも、クモの巣と蜂の巣がやたら多い。
8月9日(土) カラフシン谷入口11:00~往路キャンプ地20:30
本日からロバ使いを雇ってのキャラバンが二日間。出発がやたら遅く、スタッフ・馬使いは
みんなノンビリ。今日はそんなに歩かないのかな?BCは意外と近いのかも・・・等と
メンバーは思い込むが、大きな間違いでした。
昼前にようやく出発だが、暑い熱いアツイ!湿度がかなり低いので日本的な苦しさはないが
気温が35℃前後あるので(しかも日陰無)数時間後にはフラフラ。
ようやく15時頃昼食(?)だが、そのときちょうどカラフシン谷からロシアチームが下山してきた。
彼らの話によると、
・カラフシン谷にはバスク人・ポーランド人のチームがいる。
・ここから僕らのBC予定地まで徒歩15時間以上かかる.... とのこと。
特に2番目の所要時間に関する情報にメンバー全員絶句。
なんで?イメージとずいぶん違うぞ~等と文句たれても仕方なく、ひたすら歩く。
夜になりようやく本日のキャンプ地。
ようやくぐっすり眠れると思いきや・・・・。
ゲリ勃発
体調が悪かったのとか、生水やリンゴの取りすぎたとかいろいろ原因考えられますが、
とにかくひどい!1時間おきに”腹痛→ゲリ→抜け殻”の無限ループ・・・
真冬のビバークよりツライ、死ぬかと、勘弁してくれと、解放してくれと~
8月10日(日) 往路キャンプ地8:00~BC20:00
朝、まったく眠れず、まったく食えず。本日はおそらく12時間以上の徒歩。マジですか?
ゲリ止めにかすかな希望を託し、Y野井サン曰く「表情がない」状態でひたすら歩く。
馬使いのニイチャンにも心配されつつ、耐えて歩く。昼頃から若干回復?
その代わりに今度はO内サンが缶詰にやられたらしく、悶絶開始。
「ロバ呼んでくれ~~~ィ(乗せてくれ、という意)」の叫び声が虚しい。
そんなこんなで歩くペースはちっとも上がらないが、もろい岩山の風景の中で
目標とする岩峰のどっしりした姿が見え始めると励まされる。
ヨタヨタになりながらようやくBCに到着。疲れた、ただ疲れた。
8月11日(月) 休養日
本日はさすがに休養日。
胃腸が回復してないので朝食はほとんど食べられないが、気分は悪くない。
一日中読書。今山行では宮部みゆきの「ブレイブストーリー」を持ってきた。
映画みて面白そうだなと思ったが、小説もなかなか。基本はファンタジーだけど
人種差別やら宗教問題、離婚など大人でも考えさせられる内容が子供にも
わかりやすい表現でよくまとめられてる。よい気分転換ですな。
現在、BCはカラフシン谷に東西二つある谷のうち東側のAkSu谷にある、(西側はKaraSu谷)
明日の予定ではO内N樹・妹尾組(以降、O内組)はAkSu谷西面のルートへ試登。
Y野井夫妻(以降、Y野井組)は谷東面のルートへ行くこととなる。
夕方、ルートの情報が日本でほとんど手に入らなかったため、近くのポーランド・バスク両BCへ話を聞きにいく。O内組はバスクBCへ。かれらは3人で来ておりかなりのツワモノのようだ。
8月12日(火) 休養日
朝5:00に朝食とコックに伝えたはずだが、どうやら今回のBCスタッフ2名は両方
ほとんど英語がしゃべれないらしい。(ロシア語Only)
結局、朝食は遅いし、メンバーのほとんどが体調の回復が芳しくなくので休養日となる。
午前中、妹尾は昨日バスクBCで撮らせてもらったルートのトポ写真を元にルート図作成。
午後はO内サンと取り付きの偵察。
BCへ帰るとバスク3人が遊びに来ていた。明日Y野井組がトライするルートを昨日彼らは登っており、標高差1300m、60mロープで40Pのラインを彼ら(の内2人)は24時間で完登・下降してきたという。しかも40Pのうち、ビレイしたのは15Pのみ。(あとは同時登攀?) これが世界基準なのか・・・。
8月13日(水) BC10:00~取り付き11:00~4P目終了点15:00~BC19:00
Y野井組は本日より"ロシア正教100周年記念峰・フランスルート"にトライへ。
このルートはBCの対岸が取り付きなので、明日からトライでも水量の少ない今日の朝に渡渉する必要がある。O内組は試登へノンビリ出発。
O内組トライ予定のルート"THE MISSING MOUNTAIN(580m、6b[5.10b/5.10c]、14P )"BCから1時間ほどのルートだが、オールナチュプロのルートでクラックも豊富にあり、確保(懸垂)支点が見つけられなければどのラインがルートなのか結構迷う。結局、支点は見つけられず登れそうなルートからトライ。
基本的に登攀中の中間支点・確保支点ともカム・シュリンゲ類で作成。(たまにハーケン)
1P妹尾リード。トポだとグレードが6a(5.9/5.10a)とあったが、登ったラインが違うのか、もっと簡単。
1P終了点を発見、予想よりも10m近く右だった。
2P妹尾リード。トポではこのピッチも6a(5.9/5.10a)。でも僕の登ったラインはⅢ級+?
3PO内リード。スラブが渋いものの、それでもⅣ級+?
4P妹尾リード。Ⅳ~Ⅴ級
本日は体調とこの地域の岩の感触の確認のための試登なので、ここで終了。明日から本番。下降支点は見つかったが、登ったルートとだいぶ違った。O内組の一致した見解として、
確保(下降)支点をつなげたラインは岩壁の弱点を無視していると感じられた。
8月14日(木) BC6:20~取り付き7:15~14P終了点19:00
少し予定より遅れて取り付きへ。1Pは昨日Fix済み、ユマールであがる。
2~4Pは昨日と同じラインで。
5P妹尾リード、比較的厳しいクラック。トポの6a(5.9/5.10a)は妥当かと。
6PO内リード、ここら辺はトポ通りのラインで若干むずかしめ。
7P妹尾リード、易しいフレーク沿い。Ⅳ級?
8PO内リード、大テラスの基部まで。Ⅲ級?
ここでビバーク適地の大テラスに着く。おそらく夜までに
あと5~6Pで夜までにここに戻れるだろうから、ビバーク装備・カッパ類など軽量化のため
ほとんどここにデポ。これが間違いだった・・・
9P~14P、ツルベで登る。5.9~5.10a、傾斜が立つ凹角クラック。
ここまでほとんど下降支点が見当たらない。下降は支点探しで苦労するだろうなと。
15P妹尾リード、クラック~フレーク。Ⅴ級?
16PO内リード、直登、右上どちらも難しく行きづまる。
この時点で18:00、ここで協議の結果、下降支点を探しながらとなると敗退に。
しかし14P終了点は小テラス、残りはどう見ても2~3P。悔しい、どうする?
再び協議、ここは岳人根性でこの小テラスで着の身着のままビバークに決定。
岩陰に二人で身を寄せてロープを布団?代わりに震えながらビバーク。
寒いが、夜になると風もやみ何とか耐えられる。
8月15日(金) 14P終了点7:00~頂上11:00~取り付き16:30~BC17:30
朝、震えながらスタート。
15PO内リード。昨日と同じライン。
16P妹尾リード。左にトラバースして直登。5.9?
17PO内リード。Ⅲ級
最後の10mぐらいはO内さんが譲ってくれる。感謝と共にTOPへ。
記念写真と休憩の後、下降。
所々、下降支点を見つけるが、ほとんど60mロープで区切られており、
50mの我々は時に新たな下降支点、時にクライムダウン、時にロープが引っかかり
登り帰しと苦労する。水も食い物も昨日の昼以降ほとんどなく、特にのどはカラカラ。
14:00に大テラスへ。デポした水をがぶ飲み、ホッと一息。
そのあとも黙々と懸垂下降。天気も崩れだし、先を急ぐ。
ようやく16:30取り付きへ。雨が降り出す中、BCへ。
BCでは空腹と渇きで出された食事を食い荒らす。ケモノですな、ケモノ。
対岸の上方はすっぽり雲の中。Y野井組は厳しいビバークだろうと心配する。
(後編へつづく。)
Nagatomoです。前半、面白いですね。私も行きたかった〜(^o^) 後半が楽しみ (^_^)v
投稿情報: K1 | 2008/09/11 15:18
リンク教えてくださってありがとうございました。一度きりの人生、十分に楽しんでおられるようで、嬉しい限りです。
今日のブログで紹介させていただきますね。
投稿情報: 山室真澄 | 2008/09/28 16:23