先輩たちが今回作ってくださった計画書の「目的」が「野島さんの赤岳主稜」である。
初心者の私にロープの流れを教えようと、マツさんが、捻挫の治り切らない足を押して立案してくださったのである。これは、がんばらなくてはいけない。
先輩たちのご期待に応えるまではできなくとも、少なくとも足を引っ張らないようにしなくては…。
限られた時間の中で、記録をあさればあさるほど不安になる。どうやら、最初の「チョックストーンの石」と、後半6ピッチ目くらいが核心らしい。
私で大丈夫だろうか。行けるだろうか。不安。前夜は目が冴える。
当日。7時15分、美濃戸口発。行者小屋10時10分着。阿弥陀組と別れ、装備を整えて、10時35分行者小屋発。
取り付きに向かう。主稜に先行パーティが見える。数人、数珠繋ぎになっているではないですか。
おお、これはヤバイ。そもそも主稜に日帰りで行くという、時間的にキツイ計画なのに、さらに渋滞待ちが入るとなると、これは大変だ…。
それでも11時15分、取り付きに到着したころにはどうやら先行パーティも抜けた模様。私たちもいっこうさん・マツさん組と、古川さん・野島組に別れ、早速取り付く。
ここで出ました。ウワサの「チョックストーンの石」。…うむ?これはどうやって抜けるのだ?リードしてくださった古川さんの動きを思い出しながら、
石に抱きつくようにして何とか超える。
2ピッチ目から数ピッチ、大きな問題なく超える。古川さんが、易しい箇所を選んで、私にリードさせてくださる。
「手袋をはずさずにロープ・カラビナ、シュリンゲを扱えるように。もっとスピーディーに。」などいろいろ教えて頂きました。またマツさんは、時折、「手指は大丈夫?足は冷たくない?」などと優しく気遣ってくださった。
天気はよく、気温もさほど低くはなく、風は強いけれど耐えられないほどではない。周囲を見渡すと、赤岳の岩稜群が私たちを取り囲むようにそびえたち、圧倒的迫力で迫ってくる。
すばらしい!文三郎から見る赤岳とは全く違う、何倍もすばらしい光景でした。
しばらく進むと、6ピッチ目か7ピッチ目で「核心」のピッチが出る。ここは古川さんがリードしてくださる。
私もなんとかそこを乗り越え、その後1ピッチ行って、ロープをしまう。15時45分、稜線に抜ける。
感動と充実感をかみしめながら、風のあたらないところでしばし休憩。その後、地蔵尾根から行者小屋に下る。17時15分、ヘッデンをいつでも出せるように準備して、行者小屋発。
一刻も早く阿弥陀組の待つ八ヶ岳山荘へ戻ろうとしてか、走るように降りる古川さんの後ろを追いかけ、追いかけして、17時55分、美濃戸口に戻る。
今でも自分が赤岳主稜を登り切ったとは信じられないくらいです。皆様のお力を借りて、長年憧れだった主稜にとうとう行けました。皆様、本当にありがとうございました。
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