2008年3月1日(土)〜2日(日) L: 森(記)、妹尾
3/1 ロープウェイ駐車場4:20―5:40一ノ倉沢出合5:55―7:50シンセンのコル8:00―雪庇通過13:05―稜線(オキの耳直下)13:30―ビバーク決定14:00
3/2 オキの耳直下8:00―8:10肩の小屋10:30―天神平スキー場11:45
今回悪天候のためフォーストビバークとなりました.皆様に御心配をおかけしたことお詫び申し上げます.
3/1 2/29の22:45和光市駅集合、盛山氏の車に乗り、盛山、松澤、妹尾、森で谷川岳に向かう.ロープウェイ駐車場で2時間の仮眠をとり出発.雪が大変多かったが、前をスノーシュー、ワカンの3人組が歩いていたことでかなり楽をする.出合から盛山、松澤(一・二ノ沢中間リッジへ向かう)に先行して出発.視界は良く、一ノ倉沢下部全体を見渡せる.ラッセルは脛程度.時々雪が激しくなったが、ほとんどは視界良好で迷うことはなくシンセンのコルに到達.一ノ沢下部で登って来る盛山、松澤を確認したが、その後どのように行動したかは分からない(中間リッジに向かう途中の雪田通過が困難で撤退したと後で聞く).一ノ沢上部で上がって来る他パーティーを確認したが、すべて降りて行ったようで、恐らくこの日に東尾根に入ったのは我々だけだったでしょう.
第二岩峰は右からトラバースして巻く.雪が柔らかくて崩れやすい場所があったが概ね問題なし.岩峰の上からすぐ上の岩壁(廣川さんの本では雪壁と記載)全体を見渡せたが、岩壁正面、右側いずれも岩が露出していて登るのは困難のように見えた.よって岩壁の左に沿って登って行く.傾斜がきつく、雪も柔らかいため登りづらい.リッジまで5mのところでさらに雪が柔らかくなり登りが困難になったため、右の岩のあるところに移ってリッジに上がる.今回の行程でここが一番難しく感じた.
この先は雪庇の先端をぼんやり左に見ながらひたすら雪のリッジを登って行く.さらに登ると今度は一ノ倉沢側に雪庇が現れ挟まれる形.この雪庇の切れたところを通過するが、その先で3つのシュルンドの間を縫うように抜けることになったため緊張した.
第一岩峰上は右から巻く.そのまま斜面を登って行き、正午前に雪庇の下まで到達.ここまで視界は悪かったが、気温は高いしさほど困難なところはなかった.視界が悪く雪庇の乗越し場所を探すのに右往左往したが、1時間かけて何とか探し出す.この雪庇を乗り越せなかったら東尾根を下降する以外ないと考えていたのでホッとした.雪が降り積もり東尾根は表層雪崩の危険があるし、第一岩峰上の柔らかい岩壁を降りるのは大変だったと思う.
雪庇を乗り越したところの尾根を国境稜線と間違えて進むがすぐに気付く.30分ロスしたが国境稜線(オキの耳南側)に到着.新潟側に越えるとさらに風雪が強くなり、視界も悪い(ほぼ3m以下).視界が若干好転した際に50m程度進むも、風雪がさらに激しくなるとともに視界が完全に奪われる.稜線のラインすら確認できず、オキの耳まで戻ることにする.オキの耳で、群馬県側から(雪庇の危険はあるが、風雪、視界共にまだまし)巻くことも考えるが、妹尾がビバークを提案.事前の予報ではこれから悪くなる一方であるため、オキの耳直下(南側)で雪壁の裏側にタテ穴の雪洞を堀り、ビバークとする.
雪洞は150 cm程度の深さ.テント型ツェルトなので、穴の中でツェルトを被る.妹尾はシュラフを持っていないと言うのでエマジェンシーシートを貸そうかと言ったら、ダウンジャケットがあるから必要ないと言う返答だったため自分で使う.お湯を沸かしココアを飲みつつ、コンロで暖をとる.妹尾は腰が痛いと言っていたが、少し疲れてもいる様子.妹尾が坂本さんに現在地を伝え、盛山、松澤両氏にビバークすることを連絡して頂く.
この後持っている服を全て着込み、私はシュラフにもぐり込み、上からエマジェンシーシートを巻く.最初は暑いくらいだったが、夜になって冷え込み始めちょうど良いくらい.20時頃右側面及び足が雪で埋まりだしたので、這い出して雪かきをする.雪かきによってジャケットに雪が付着し、シュラフ内にもぐり込むと体熱で融けてシュラフを濡らす.夜半になってかなり冷え込み始め、また積もった雪が左右の腕を冷やすため寒い.身体を揺らすと共に、食糧を補給し続けて体温を保持に努める.夜になって降雪が激しくなり、風が弱まるタテ穴にはかなりの雪が降り積もる.合計5回交代で雪かき.寒かったが寝不足だったので3時間ほど眠る.合計18時間くらいツェルトの中でうずくまっていたのでしょうか.冬山ではいつも思うのですが、この時は朝の訪れがさらに待ち遠しかったです.
3/2 気付くと6時半.明るくなっていた.夜に比べるといくぶん風も収まり、降雪も弱まっている.私の体調は良い.妹尾に食糧を食べて適当な時に出発しようと言うと、何と全装備をザックから全部出したために雪かきの際に食糧、オーバー手袋等を雪の中に埋めてしまったと言う.またインナー手袋だけだったために指先が凍傷になったとも言っている.正直言って呆れたが、多少の食糧を渡して食べさせる.オーバー手袋の替えは双方持っていないために、雪から掘り起こして使う以外ない.ツェルトの中は寒く、狭いためにここで湯を沸かすよりは10分歩いて肩の小屋に行った方が良い.そういう訳で移動.
風もまだ強く、視界も10m以下だが、注意すれば左に稜線を確認しながら歩くことはできる.妹尾はよたよたと後方を歩く.状態は良くなさそうであるが、肩の小屋に連れて行く以上の改善策はないためとにかく歩かせる.新潟県側は雪がクラストしていて歩きやすく10分ほどで小屋に到着.冬季部屋の扉を掘り起こし、中に入った.ガスストーブをつけ、妹尾に火にあたるよう言うが憔悴しているようであたらない.妹尾はしばらくして食糧を取り出し食べだしたが、持ってきた食糧はかなり少ない.ビバークに足るだけの食糧は持ってきていない.お湯を沸かしてココアを作り、妹尾に飲ませたところようやく落ち着いた模様.食糧が少ないようなので、ビスケットを数枚与える.
そのうち天神尾根から5人組が上がってきた.トレースをたどれば下りるのも楽とにわかに気が楽になる.2時間の休憩の後小屋の外に出ると天気が快晴に変わっていた!おかげで楽に下山しました.12時前に天神平のスキー場に到着.坂本さんに連絡.駐車場に下りると盛山、松澤両氏が待っていてくれた.2人が中心になって妹尾の凍傷の応急処置をしてくれた.ありがとうございました.
今回のビバークは予想外の出来事だったとは言え、自分の身に対する危険は感じませんでした.一方で冬型は弱かったとは言え、稜線ではあれだけ荒れることも身を持って実感しました.登るべき天候ではなかったし、(群馬県側の天候が比較的良かったとは言え)早めの撤退判断ができなかったことは反省すべきだったと思います.また連絡手段として無線機を持つ必要性も感じました.さらにパートナーの体調をしっかり把握できなかったことも良くありませんでした.
しかし妹尾氏の凍傷と体力の消耗は(ビバーク準備を伝えておいたにもかかわらず)準備を怠ったことと、自分の身を守るための理性的な行動をとらなかったことが原因、すなわち自分の責任だと思います.今後の糧にして頂きたいと思います.
このたびは、パートナーの森さんや、
下で待機していただいた松澤さん・盛山さん、
連絡係の坂本さんをはじめ、多くの方に多大なご迷惑をお掛けいたしました。
自分の甘さがすべて悪い方向に出てしまい猛省の極みです。
残雪期に入り、北アルプスなど厳しい山行にまだまだ入って行きますが、これからも御指導・御助言いただければと思います。
投稿情報: ランディ・びん | 2008/03/17 14:28