続けて後編をどうぞ。
19日(日) 双橋溝→野人峰付近車道→双橋溝
今日は休養日…のはずが快晴なので(本当なら中国遠征3番目の目標の)野人峰偵察に行くことに。
ギヤ一式を背負って王さん(民宿の御主人)の車で一路、野人峰ふもとの車道まで向かう。
途中、王さんやポーターの方から得た岩峰・岩壁情報をもとに車道から偵察、何回も通った道だったが、
案外見落としているもので数百mスケールの壁がいくつも遠くに見える。
いつか自分自身であれらの壁にラインを引きたいと本気で思ってしまう。それぐらいきれいな壁、
しかも未踏のおまけつき。
当初は野人峰の取り付まで車道から行くはずだったが、疲れもあり(一部情報では(?)車道の先にある
ビールとシシカバブーの為とも…)車道沿いに歩いて双眼鏡でラインを探すことに。
恐らく来年以降にこのラインを狙うのだろう。隣の壁にはあの山野井さんが引いたラインも…。
数時間歩いた所で売店発見。問答無用でビール&シシカバブ-。おまけにジャガイモ&売り子さん曰く
「マツタ~ケ」の串焼き。うまいっす!とか言ってると天候悪化。通りすがりの近くの食堂のおじさんの
御厚意で食堂で雨宿りに。迎えの車が僕らを見つけられず、お互い右往左往のハプニングが
あったものの、無事民宿へ。さあ明日はいよいよリベンジの白海子BCへ。
20日(月) 双橋溝→白海子BC
7:00起床、一度歩いたルートは気分的に楽、高度障害も勿論なし。9:00発13:30BC着。
晴れ時々曇りで景色もいい。大内さんはやっぱり写真に夢中で遅れる(笑)。
昼飯後、取り付きまで妹尾が荷揚げに向かう。一人で必要分ほとんどに上げなのでめちゃくちゃ重いが、
これが中国ラストクライミング、気合が違います。
取り付きにデポする。ふと長友さんのクライミングシューズが片方しかない事に気づく…あれ?…
途中落とした?いやまさか?BCにわすれた?片方だけ?色々思案するが…
通った道を探しつつ戻るがなし。BCにもなし…ヤバイ!
もしも無かったらどうしよう…夜も不安一杯。長友さんは「取り付きにあるの見落としたんでしょ」と
にべもなし。
21日(火) 白海子BC→取り付き→5P終了点→取り付き→白海子BC
いよいよ出発。しかし夜明けから断続的に雨。4:30朝食のはずが結局7:00に。
微妙な天気だが残りの滞在日数もギリギリなのでとりあえず出発。取り付きにつき、長友さんの
靴を探す。心臓バクバク。やはりない!・・・・と思ったら荷物の間に挟まってた!!
登頂と同じくらいホッとしました(苦笑)
準備完了も、天候微妙で結局登攀開始は11:00、全P大内さんリード。
壁が濡れており、グレードが1~2ランクUP。人工主体で時間もかかる。
数P登った所で「今夜はここら辺でビバークか?」と思っているところへ霰&雷。迷わずデポ&撤退。
明日こそ滞在日数を考えてビバーク体制で突入だろう。夕食時にエージェントの方が持ってきた
日本曲(キロロとか)が流れる。妙に懐しかった。
22日(水) 白海子BC→取り付き→11P終了点
早朝から快晴。5:00朝食、6:00出発、7:00取り付き。とにかく寒い・・・。
1Pと3Pは前日の固定ロープ、晴れてはいるが雲が覆うたびに常に雨におびえる。
ほとんどを大内さんがリードするが、前日に濡れた箇所を登っているときにずり落ちて
肋骨を痛めたらしく、辛そう。こういう時に「リード代わります!」と言えないのが情けない。
9P終了点のテラスでビバークかと思いきや、11Pのトラバース後にかなり広いテラスを発見。
今日は足を伸ばして寝れそう。天気も小康状態が続く。明日こそは・・・。
23日(木) 10P終了点→頂上(16P終了点)→取り付き→白海子BC
そしてとうとうその日が来ました。
夜中は寒くて寝られず。次回はテントシューズもって行きますよ、足元が寒くて寒くて。
しかし寒いのは晴れてる証拠。標高5000mの星空は最高に満天です。
4:30に起床、食事、なぜかみんな二度寝(苦笑)。7:00登攀スタート。11・12P長友さん、
13P大内さんリード。13Pでいよいよ登頂かと思いきや、大内さんの「あと2Pはあるぞ~」の声に
長友さん・妹尾は落胆。今日はビバーク品、食料などはビバークテラスにデポなので
久しぶりに身軽な登攀となり、フォローであってもなるべくフリーで登る。
そしていよいよ長友さんリードで最終P。感動の初登頂。(13:50)
1P 50m 5.10a スラブ~クラック(大内リード)
2P 25m IV+ クラック~バンド(大内)
3P 50m A1・V スラブ~クラック(長友)
4P 50m A0・5.10a 逆層スラブ(大内)
5P 25m IV フレーク(大内)
6P 50m A0・V+ スラブ~クラック(大内)
7P 50m A0・V- スラブ~バンド(大内)
8P 30m A0・5.10a スラブ状フェース(大内)
9P 35m A0・5.10a フェース~斜上バンド(長友)
10P 50m A1・5.9 逆層フェース(大内)
11P 25m III- トラバース(長友)
12P 50m A1・5.9 フェース(長友)
13P 50m A0・V フェース~クラック(長友)
14P 50m 5.10c チムニー~小ハング(大内)
15P 50m 5.10a ダイク~斜上クラック(大内)
16P 50m 5.10b 斜上クラック(長友)
頂上は尖っていて人が数人またいで座れるくらい。三人で握手や撮影。
忘れずサポートして頂いた中国側スタッフに敬意を表し、中国国旗をかざす。
(この国旗の赤でBCは僕らの登頂に気づいたらしいです。)
天気は晴れ、遠くにはこの山群の盟主である四姑娘山(6250m)が見える。
最高の気分です。
(下の右写真頂上に3人が写ってます。BCから撮影)
3人とも疲れているが、この時間なら今日はBCまで降りられる、というか降りたい。
合計15P を全員無心で懸垂下降。無言の役割分担で早い早い。4時間30分で一気に下った。
18:30に取り付き、19:30BCへBCのスタッフと握手、記念撮影。
登頂も嬉しいが全員無事帰ってこれたことの方が嬉しかった。夕食のカレーは最高!
大内さん・長友さん・BCスタッフ・山・ギヤetc、すべてに感謝。
24日(金) 白海子BC→双橋溝
疲れが残るが、気分は爽快な早朝、休むまもなく双橋溝の民宿へ下山。
明後日にはいよいよ日本です。
今日は下山のみなのでのんびり下りる。
車道まで下って、王さんの車で民宿へ。途中車のパンク、交換用のタイヤも使い物にならず(笑)。
結局大内さん夫妻・と運転手の王さんは乗れる(?)らしく、長友さん・妹尾・他2人は残り数kmを徒歩で
行くことに。それでも気分は爽快、しばらく歩くと代わりのバイクが来て長友さん・妹尾で3人乗りで
一路民宿へ。風がなおさら気持ちいい。
民宿ではポーターの人たちに名札を作って写真撮影会。顔馴染みでもここで初めて名前を知る人も多い。
25日(土)
お世話になった民宿ともお別れ、早朝に民宿を出発。
別れ際に民宿の女将さんから幸運の(?)首飾りを貰う。謝謝。
行きに成都から来た道は通行止めらしく、別のルートを通る。どっちにしても丸一日かかるルートです。
色々な景色を見つつ、今回の遠征を思い出してると、なにやら車の調子がおかしい。
何回か止まって修理しても調子は直らず、男全員で押してエンジンをかけたりしてみるもついに故障。
近くの民家で交渉して車を借りる。そこからまた長い道のりを数時間かけて成都へ。
こういうトラブルも海外遠征なら慣れないとね、と大内さんに教えられる。
夜遅く(22:00前?)に成都到着、今夜は四川料理の代表、「火鍋」を食べる。
簡単に言えば「激辛しゃぶしゃぶ」です。具材はモツなべみたいなもの(色々あって10種ぐらい注文?)
長友さんがニヤニヤしながら「辛いほうあんま食べないほうがいいよ」とのこと。
しかし腹が減ってたのと、確かに辛いが食べれないことはないので、甘口タレではなく辛口タレを
がっつく・・・・が。その夜は満腹でホテルのベッド。
26日(日)
いよいよ帰国。しかし・・・おかしい、なんかおかしい。もちろん腹です。
中国に来た当初から一週間ぐらい悩まされたゲリもすっかり治ってたはずなのに再発。
しかもトイレに行くと出口が(食事中の方スミマセン)猛烈に痛い、というか熱い。
長友さんは当然のごとくニヤニヤ。「だから言ったのにと・・・」の一言。はいその通りです。
その日は結局一日中下痢の痛みにおびえながらスーパーで土産を買い物して空港へ。
昼過ぎに成都発で成田には22:00時前到着、終電にはギリギリだった。
大内さん夫妻とお別れして、久しぶりの我が家へ。途中の駅で2~3回トイレへ駆け込みました。
おのれ火鍋め、いつの日か再挑戦(笑)
というように今回の遠征報告でした。
技術的には登攀においてはすべてフォローでしたのでほとんど役に立てませんでしたが、
今までなんとなく登っていたクライミングに初めて大きな目標ができたと思います。
「いつかあんなビッグウォールを攀じりたい」
そんな強烈なモチベーションを頂いた貴重な遠征でした。
遠征を通じてお世話になった大内さん夫妻、長友さん、平山さん、
橋井さん、小川さん、佐野さん、川野さん、船山さん、朝岡さん。
登攀に集中できるよう、その他全般をサポートして頂いた中国スタッフの方々。
この遠征に参加を持ちかけて頂いた柏瀬さん、深田さん。
遠征に備え、物覚えの悪いボンクラ(苦笑)に必死に技術を教えていただいた
坂本さん、玉谷さん、松澤さん、斉藤さん、森さん、盛山さん他まつど岳人の皆様、
本当にありがとうございました。
「ヤマは独りでは登れない」ことを痛感し、この経験を会に還元できるようがんばりますので
これからも宜しくお願い致します。
来年もいこっかナ~。