8月22日・23日 イッコーさん、ノジ(記)
21日、夜11時高尾発。25時頃、菅の台の駐車場に到着し仮眠。
22日、朝一番のバスに乗り、桧尾橋で降りる。巡視路の入り口が分からず、45分間くらい、うろうろしただろうか。通りかかった親切なお兄ちゃんに教えられ、ようやく巡視路を発見し、それをたどって入渓地点へ。
ううむ、水量が多い。しょっぱなからロープを出して渡渉する。後で聞くと、イッコーさんは、この水量を見た時点で、遡行は無理かもしれないとお思いになったそうである。ノジはうわさに聞く太田切のゴルジュというのと、水量の多さに圧倒され、緊張しておちおち写真を撮る余裕もない。
最初の大岩は大したことなく過ぎたのだけれど、その後も巨石の乗越が続き、うんうんとうなりながらゴルジュを遡行する。一か所、やっと巨石をのっこしたところで、とんでもない水量の恐ろしい滝にぶつかる。これはもう、行けないかもしれないとさえ思う。これまたひやひやものの飛び石を飛び伝って、滝に近づき見物する、が、とても取り付けそうにない。だがイッコーさんは行ってみるとおっしゃる。まず最初の滝を裏からくぐって対岸の石の上に乗り、そこから、激しく水を落とすつるつるの巨石をエイッと超えてイッコーさんが滝上に降り立ったとき、下でハラハラしながらビレイしていたノジは、この人はマジで沢の神様なんじゃなかろうかと激しく感動した(ビレイ中だったためこの時のイッコーさんの写真を取れなかったことは返す返すも残念である)。その後の巻きも結構いやらしい。へつったりよじ登ったり苦労を重ねることしばらくして、ノジとイッコーさんはほぼ同時に叫び声をあげることになった。目の前に圧倒的な滝が現れたのである。
梯子ダル沢の滝である。はい、これほどの美瀑は見たことがないというくらいの美瀑です。そして、この沢が現れたということは、一時はもうとても無理かと思ったこのゴルジュを無事に終えたということを意味する、イッコーさんとゴルジュの終了を確認して喜びあう。
そこから先は、大したことがない、とか登山大系に書いてあるのだけど、水量は多いし、なにげに大したことありましたよ、ええ。大きい滝はないんだけど、それでもスクラム渡渉じゃないと渡れないし、簡単そうに見えても足を入れると掬われそうになるほど流れがきつかったりして、気が抜けない。
東熊沢出合に14時25分到着。記録を見るとここで幕営するパーティがほとんどなのだけれども、明日の天気が思わしくない予報であるため、今日中に抜けてしまうことにして、ひたすらガレを詰める。最後のやぶ漕ぎが結構大変、その間に雷が鳴りだし雨が降り始める。
藪をこいでいる間は暑くて、雨でもちょうどいいくらいだったんだけど、登山道に抜けた途端、とても冷たい風が吹き荒れ雨も殴りつけるようだ。18時、大急ぎで木曽殿乗越山荘に避難する。が、ここは幕営不可、小屋の横にテントを張ることもまかりならぬ、という。なのでここで泊まる。夜を徹して小屋を揺るがすような風雨で、結果的には小屋に泊まって本当に良かった。
23日。朝が来て起きねばならないことを嘆き悲しむイッコーさんをなだめたりすかしたりして起こし、5時45分小屋を出る。相変わらず風は強いが雨はやや、ましになっている…様な気がする。ともかく空木岳を超えねばならぬ、ところがこれが、岩稜の小ピークが結構あって上り下りを繰り返す。「イッコーさん、あれが頂上ですよきっと!」「いや、オレは騙されないぞ!!」・・・この会話を何度繰り返したことだろうか。それでも6時50分、空木の頂上に無事に立つ。このころから風雨弱まる。駒が峰ヒュッテを超えるころには雨も気にならない程度になり、しっとりと濡れた美しい林の中を下山するうち、完全に雨が上がり晴れ間も見え始める。11時10分、下山完了。
総括。
はい、よく頑張ったと思います。ゴルジュ突破のリードを切るだけの度胸がないノジとしてはせめて藪漕ぎくらい全トップしたかったのだが、最後の数メートルのハイマツには力尽きてしまいイッコーさんに替わっていただいてしまって、申し訳なかった。
全体的に白い花こう岩に美しいブルーの流れが映える、とても素晴らしい谷だったのだけれども、なんといってもゴルジュの水量の多さに緊張してしまって、写真があまり撮れなかった。途中雨に降られたけれど、その時にはすでに安全地帯まで抜けていたし(沢泊しない、という判断は正しかったと思う)、下山もずっと雨かっと思っていたら、意外にも晴れて、思ったより楽に下山できました(長かったけど…)。この夏の会心の一本だったことは間違いないです。イッコーさん、本当にありがとうございました。ぜひぜひ、また宜しくお願い致します。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。