栃木県・足尾の忘れられたルート『チャンピオン岩稜』へ挑戦しました。
日程:2014年9月21日
メンバー:あたる(CL)・ウィリー・マスダ(記) ・・・敬称略
05:00銅親水公園駐車場 ~ 07:00ウメコバ沢出合 ~ 08:30チャンピオン岩稜取付き ~ 16:008ピッチ目終了点より下降開始 ~ 18:30ウメコバ沢出合 ~ 20:30銅親水公園駐車場
深夜の高速道路を駆け抜け、タムロする鹿を蹴散らして銅親水公園に到着。
駐車場で仮眠をとって、午前5時に林道を歩き出す。
天気が良く、絶好のクライミング日和なのに駐車場では他の登山者を一切見かけなかったのが気になる。
日の出前の暗い工事道セッセと進むうちに、空が明るくなってくる。
ゲートを過ぎ、朝露に濡れた藪と崩落したガレキ帯が交互に続く林道を進む。
堤防を越えた所で林道からへ降り立ち、広い河原に流れる幅5m・スネ丈ほどの水位の川を渡渉。
アプローチシューズを十二分に浸水させて『ウメコバ沢出合』に到着。
日陰の沢の入口からは、流れ落ちる滝が我々を出迎えている。
フィックスロープが張られた第1、第2の滝を右手から巻いて行く。
第3の滝を越えると沢が開け、左右から稜線末尾が集まる取付き点となる。
今回登るチャンピオン岩稜は、末端のジャンクションピークを左右の涸れ沢から迂回して取り付く。
迂回路とは言え、傾斜は急なのでロープを出してジャンクションピークの背面へ回り込む。
ここより伸びる稜線がチャンピオン岩稜の始まり。
1ピッチ目…と言っても、ドコにもボルトや目印が存在しないので、本当に1ピッチ目なのか分からないまま、とりあえず登りやすそうな階段状のフェースから登り始める。
ネット等を探してみても、松木沢の岩ルートに関する情報は少ない。
少ない中でも、多くに挙げられているるのは“岩が脆い”という事。 実際に登ってみると、なるほど納得のボロボロっぷり。
手をかけたホールド、足を乗せたスタンスがグラグラ、ゴトゴト…。
大丈夫そうに見える大きなサイズの岩もガタガタ動いてくれるので、全くもって信用が出来ない。
どれくらい信用出来ないかというと…
“期末テストの日に「全然勉強してないわー」とか言っておいて、上位の成績を取っちゃうクラスメイト”
…並に信じられない。
石橋を叩いて…ならぬ、岩壁を擦りながら御機嫌を覗うクライミングが要求される。
そして途中支点は勿論、各ピッチの切れ目もアンカーや残置の支点が無いので全て手作り。
テラスに上がって一息つく間もなく、眼を皿にしてカムやハーケンの打てそうなポイントを探し出す。
これまで親切に打たれたボルトや、立木に巻かれた残置スリングを当たり前のように使用していた“ゆとりクライマー”の自分が恥ずかしくなった。
立木も枯れたこの痩せ尾根では、これまでの整備されたルートに甘んじた登攀はまるで通用しなかった。
ビレイ点で2点、3点と多めに亀裂に差し込んだカムやハーケンも、この岩質では果たして効いているか疑わしい。
例えるならば…
“マラソン大会で「一緒にゴールしようネ!」と言っておきながら、ラスト500mでヘバる私を猛然と振り切ってゴールしていった親友と思っていたアイツ”
…くらい信じがたい。
ルートの難しさよりも感じるのは、岩を崩さないように慎重に登らなくてはならない厳しさ。
難しさと厳しさの両方を感じたのは、核心の6ピッチ目。
チャンピオン岩稜一番の傾斜角であるハング越えの約5m壁。
ココには古いリングボルトと新しいペツルボルトが打ってある。
過去の記録にはアブミを使って越えるとの記述もある。
リードしたアタル隊長は、アブミを使用することなくフリーでこの難所を攻略。
続くマスダも、フリーで突破を試みたが、ハングを越えた後のホールドが見つからず撃沈。
長くぶら下がっているのが恐ろしいので、ムーブを探すことなくA0でソソクサと這い上がってしまった。
核心を越えた後は傾斜も緩くなり(と言っても岩は依然脆い)、ピークまで比較的易しいピッチが続く。
ただ大分時間を使ってしまい、ピークまではまだ時間がかかりそうなので、ココらで脇のルンゼへ下降して戻る事となった。
しかし、いざ下降するにしても適当な支点が見当たらない。
懸垂に耐えうるシッカリとした支点が見つかる所まで登る事に。
まだ陽は高いが、若干の焦りを感じながらロープを伸ばす。
傾斜が緩むと伸ばしたロープが稜線の岩に当たり、ひどく重たく感じる。
結果、8ピッチ目を上がった所で、太い枯れ木と小さな岩の尖塔を発見。
木にするか、岩にするか・・・。
協議して岩に捨て縄を回してバックアップも取り、ルンゼへ懸垂下降を開始する。
岩の尖塔、といってもコレも大きな浮き岩に見えなくもないので、ココロを許さずに懸垂しなくてはいけない。
この疑わしさは…
“「一生のお願いだから今度の土曜日のシフト変わって!今度埋め合わせするから!!」とかヌカしておき・・・(以下略)
…とにかく信用ならない。
1回目の懸垂で、ルンゼ内に残置支点を見つける事が出来、2回目は残置支点を使わせていただく。
その後は、やや傾斜があるものの、時間短縮の為にクライムダウンでルンゼを下降していく。
谷間である為、陽が墜ちるとあっという間に暗くなっていき、ウメコバ沢の出合に着く頃にはスッカリ暗闇の中だった。
真っ暗な長い長い林道を駐車場へ向けて戻り、緊張の連続だった本日の行動が終了した。
今回は3人で登攀していた・・・という事もあり、時間がかかり過ぎてしまい完登とはならなかった。
慣れないモロ壁に対峙して思い切り面喰らってしまい、速度が出なかったのも反省点として挙げられる。
そして何より、ルートに対して研究が疎かだった事は猛反省すべき点であった。
また行動時間が長引いてしまった原因として、アプローチと下降路で某隊員2名が隊長から遅れてあわやはぐれそうになる場面があった。…否、はぐれた。
登攀路以外のルート全体に対する理解の浅さが浮き彫りになってしまった失態だった。
散々たる結果だった今回の山行。
猛反省すべき数多くの失敗と、コレまでの登攀では得られなかった新しい経験を持ち帰る事が出来た。
支点も何も無い危うい岩稜に恐怖を感じると同時に、
「コレが自然と真っ向から向かい合う登攀の本来の姿なのでは…!!」
と、勝手に感動する自分もいた。
確固たる技術を身に付け、動じることなく如何なるルートにも立ち向かえるようになって、戻って来なくてはイケナイと思った。
15時間の行動中、遂に他パーティと遭遇はおろか、存在すら確認できなかった。
それだけ登られていないエリアなのだろう。
落石の危険があるので、あまり多くのパーティが詰め掛けるのも如何なモノかと思うが、草木も動物も寄り付かない静かな空間の中で岩と対峙できる松木沢は、アルパインクライミングを志す者として訪れる価値が高いように思えた。
絵うまいね!核心は体感10a位だけどカムは決めれるから心配なし! お互いに精進しましょう。
投稿情報: あたる | 2014/10/06 17:45
要らぬ心労をかけてしまい、申し訳ありませんです、、、。
ルートへ向かう心意気をもっと鍛えまする。
投稿情報: 脱☆金魚のフン | 2014/10/07 14:06
久々にウメコバ行きたいですな。
チャンピオン登りたいけど、まずは大凹角からかなぁ。
投稿情報: ゴルゴ | 2014/10/08 23:27