2009年5月23日(土) 前夜発日帰り
メンバー:CL盛山、松澤、妹尾(記)
今報告は盛山サンに無理言って、妹尾が書かせていただきました。
結局、”ガ○ジン”に投稿した2月の南ア縦走報告もメデタくボツとなり(笑)、
皆様に読んで「おもしろい!」と思って頂ける報告を書けるよう、
もっともっと文章を書く必要があると痛感しまして・・・盛山サン、サンクスす。
今山行は、結論から申し上げると・・・かなり痛い目に遭いました(苦笑)。
22日(金)22:00八王子~25:00道の駅・風穴の里
~7:30槍見露天風呂駐車場~10:00錫杖岳前衛壁・取付
~16:00取付~17:30槍見露天風呂駐車場~22:15八王子
今回は盛山サンの提案で、家族ぐるみの体調不良から復活した松サンと
本チャン久しぶりの妹尾の3人でマルチピッチを求めて北ア・錫杖へ向かった。
八王子では各々の勘違いで3人とも別々の場所に集合という珍事にもめげず、
盛山サンの運転と高速1000円の恩恵のおかげで3時間ちょいで仮眠にありつけた。
朝5:00に起きると、山の上がガスってる程度で天気は悪くない。
笠ヶ岳登山口そばの駐車場に車を停めて出発。前日に雨が降ったのか
登山道はかなり濡れていた。
暑くはないがかなりの湿気とガスの中、黙々と歩く。
クリヤ谷の渡渉では、雪解けのせいかきわどい部分もありクライミング風に言えば
松サンがオンサイト・盛山サン1テンで指をグキる・妹尾フラッシュ(笑)な感じ。
1時間ちょっとで、登山道から錫杖沢への明瞭な踏み跡に到着。
しかし相変わらず酷いガスで、視界がなくこの踏み跡が正解なのか自信が無い。
マァうだうだしても仕方ないよと、突っ込む。(結果的には正解)
錫杖沢~北沢~前衛壁までは踏み跡も明瞭で赤テープも豊富。
しかし(クドくてスミマセンが)ガスが酷く、雨上がりで濡れたササ藪・樹林帯を
歩き全身びしょ濡れ、北沢の出だしはほとんど沢登り状態。
「ホンとあってんの?」「アプローチ敗退か?」という疑念が頭をよぎりつつも、
アプローチが正解だという確証も、不正解だという確証も無く仕方なく進むしかない。
行けども行けども樹林とガスの中を進み、もう勘弁・・・という時、とうとう雪渓とともに
大岩壁が出現した。ガスの中、幻想的かつ威風堂々としたその姿はちょっと感動。
ここら辺からガスが晴れて、周辺にも陽がさしてくる。
左方カンテルートの取付きに不必要な荷物をデポし、
今回の目標「注文の多い料理店(6P、5.9)」を目指し雪渓の端を少し歩く。
「注文の~」の取付きはだいたい見当が付いたものの雪渓も残り、
3人が立つには悪そうだったので、隣の「無名ライン(5P、Ⅴ+・A1)」の
1P目終了点が「注文の~」1P目終了点と同じテラスだということで、1P目のみ
「無名~」を登ることとした。しかし、それが痛い目の始まりだった・・・。
1P(V+):妹尾リード。凹角を20mほど登り、左側のカンテ沿いに左上する。
しかし、前日?の雨のせいか、はたまたシーズン初めだからか、
かろうじて岩は乾いているが、クラック等はヌレヌレ&ドロドロ。
岩がキレイなら楽しいルートなのだろうが、フリクションは最悪。
プロテクションはほとんどNP(キャメ#0.5~3)、途中リングが2本。
最後の小凹角は、クラックが泥で埋まり左右のフェイスも
ホールドが乏しく、手を泥だらけにしてホールドを掘りつつ
登ったが、とうとうズリ落ちてしまった。本チャンでのフォールは
もちろん初めて。結局、このピッチはここを含めて2回A0。
終了点が結局わからず、適当なテラスでピッチを切った。
ピッチグレードはⅤ+でもおかしくないが、プロテクション・フリクション等、
ルートの状態はかなり悪く最近フリーに勤しんでた身には本チャンの
強烈な洗礼を喰らったという印象。
2P(Ⅳ?):盛山リード。「注文の~」ルートなどまったくわからず、とりあえず
上に続くクラック沿いにピッチを延ばすこととする。15mほど登ると、
テラス上にどこかのルートの確保支点を発見、一度ピッチを切る。
3P(Ⅴ+A0?):妹尾リード。フェイス上のハーケンを追って、直登。
ハング下で行き詰るが、少し左に回り込みができる。1P目より
岩も乾き、快適に登れるが妹尾体感ではV+より若干難しく感じる(5.9?)
ハング上の垂壁部分は露出感が高く、緊張する。フリーで行くと
多分5.10a/bぐらいだが、ザック背負ってプロテクションも悪いので
無理せずA0~A1しようとする。が、またしても本チャンの洗礼!
垂壁最後の大きなクラック(フレーク)にキャメ#1をセットし、ついでに
そのクラックをガバ持ちで引きつけると、そのクラックを形成する
40cm四方の岩(フレーク)がごっそり動き、カムが抜けて危うくフォール。
瞬時にすぐ下のカムを掴み事無きを得たが、下のテラスの真上だったので、
あやうく下の二人を大惨事に巻き込むトコだった。
これで以降の数メートル、カムがまったく信用できず、かなり緊張。
後続の二人に落石の注意を促し、適当に切った終了点でホッとビレイを
していると、「うわ!」と叫び声と同時にジジにかなりのテンションがかかり
一瞬緊張する。暫くするとまた登り始めたようなので一安心。
疲れた表情で盛山サンが上がってくると、どうやら例のフレークを
誤って掴んでしまい、落とす前に手を離してフォールした模様。
松サンも病みあがりながらも、奮闘して無事登ってきてくれた。
注:)「左方カンテルート(8P、Ⅴ・A0)」の4~5P目右ぐらいの派生ルート?だと
思いますが、(ちょっと自信なし)ハング上の垂壁部分が終わり、傾斜が落ちる始める
部分の右上の岩(フレーク)は5/23現在、まだ残っています。
(ネット上の他パーティーの写真を見る限り、左方カンテではない気がします・・・)
落とすと下のテラスの真上にあるので、ビレイヤーに直撃して大事故になる可能性が
高いです。これから登りに行かれる方はくれぐれも御注意ください。
マイナーなルートだと、取付くパーティーは少ないかと思いますが。
(浮石の位置は下記写真の列、右端に掲載 [盛山サン撮影] )
4P(Ⅲ?):盛山リード。3P目終了点からすぐ上に確保(懸垂)支点が見えたので、
3人ともここまでの極めて『悪い』クライミングにもうお腹イッパイだったし、
盛山サンだけ登ってもらい、懸垂途中で松サン・僕を拾ってもらうコトとした。
懸垂下降は岩溝を4ピッチで最初のデポ地に到達。途中から「左方~」に合流。
登るときは濡れて滑りやすかった道も、だいぶ乾いていた。1時間半で槍見温泉へ。
帰りの錫杖沢出合からみた今日初めての前衛壁全景を見上げると、
錫杖岳に「マダマダだね・・・・。」と云われた気がした。
槍見露天風呂は無料でごんす。アパート住まいはなかなか湯船につかる機会が
無いのでありがたい。志納の管理料金はいつか必ず・・・?
帰りも盛山サンは疲れた体にムチ打って運転頑張ってくれました。お疲れ様ス。
松サンも調子が悪い中、お疲れ様ス。一孝サン、もう30分早く連絡いただければ
迎えにも行けたカモです(笑)。
【総括・・・毎度おなじみ余計な総括(ボヤキ?)です。】
1.ルートミス
今回、痛い目に遭った最初の原因は明らかに「注文の~」1P目をめんどくさがって
「無名~」に安易に取付いたことでしょう。登るルートが決まっていて、ラインもだいたい
把握できたなら、めんどくさがらずに正規のルートに取付くべきだったと反省。
アルパインにかかわらず、クライミング、延いては「ヤマ」において、「めんどくさがって」
楽をしようとすれば、必ず痛い目に遭うと先輩方に教えて頂いていたハズなのに。
まったくもって反省です・・・。
2.シーズン初め
これはどのルートでも状態が悪いのは仕方ないといえばそうなのですが、
もっと肝に銘じて取付くべきでした。
特に北ア山奥の本チャンなら、ある程度覚悟しておくべきと痛感しました。
取付の雪渓、クラック・ホールドの泥、不安定な岩・・・。
シーズン初めの本チャンは適期以上に不確定要素が多いと身に染みました。
3月下旬からずっとフリーだけだったので、今回は本チャンに対する免疫不足が露呈
しました。まぁその分、普段フリーの岩場でどれだけ恵まれたプロテクションや
岩の状態に自分が甘えていたかも実感できたのは収穫だと前向きに考えます。
最近はフリーの腕前を上げることでイッパイイッパイですが、本チャンでその能力を
活かすには『悪場』でのクライミングも必要不可欠ですね。
白状すると、今山行は最初フリーに行く先輩がいなくて「仕方なく」ついていった感が
あったんですが、予想外に収穫の多い山行となり、盛山サン・松サンには感謝ス。
真のアルパインクライミングには、フリーの能力も『悪場』での経験も両方必要だなと
再確認できた、なかなかにピリリと苦い山行でした。
とはいっても、中国まであと1ヵ月半。エラそうな能書き垂れても、
時間が限られているんで、フリーの上達を優先せざるを得ないのも
情けないモンです・・・。
岳人向きだと思ったのになぁ。
路線変えているのだろうか・・・。
投稿情報: 管理人-鶴多郎 | 2009/05/26 23:19