2007年4月29日~5月2日 L.日置一孝
沢登がしたかった。春節にも登っており、たいした谷はないとわかっていたけれど、単独ということ、他の地域に入るにはあまりにも資料が少なすぎるということで、再び小五台山に入ることにした。
4月29日
上海―北京―蔚県
朝一番に虹橋空港へ、搭乗手続きをしに行くと、あんた、これ浦東空港だよ、と言われてしまう。なに、まさか、本当に、まじで、とうろたえてもやっぱり切符は浦東空港と書いてあった。しまった、やっちまった、上海が最高到達点かと困っていたら、後ろのカウンターで聞いてみなよ、変えられるかもしれないから、と言ってくれる。そうか、まだ手はあるんだなと望みをかけて言われたカウンターへ。結局手数料も取られずにあっさりと変更できてしまった。連休なのにラッキー。家からだと虹橋空港の方が全然近いのでタクシー代得してしまった。
昼前に北京到着、空港からバスで馬甸橋まで。この近辺山道具屋が集中している。春節に来たときより開いている店が多く、覗いてみるとクライミング装備も結構充実していた。リンクカムなんかも普通に売られていたし。
六里橋のバスターミナルから蔚県へ。今度は春節の時と違って直通バスに乗れた。
4月30日
蔚県―西合営―柏樹8:30―張家窑11:00―洞穴14:30
蔚県から直接柏樹に行きたかったがバスがない。とりあえず西合営へ。西合営からはバスがあるかなと思っていたのにやっぱりなく、結局タクシー、柏樹まで25元くらいだったか。それでも春節の時と違い、車はとりあえずあるので楽である。
柏樹から徒歩、埃っぽい谷間をひたすら延々と歩く。両側禿山、水はまるでない。こんなんで沢登ができるのか、非常に心配である。
張家窑、輝川の村をと通り過ぎ、湖上溝に入ると樹が出てきた。水もちょろちょろ流れている。そういえば輝川を過ぎたら豹と猪に気をつけろとタクシーの運転手が言っていたな。豹も猪もいなかったけれど、牛が沢山放牧されていた。
谷沿いには結構しっかりした道が続いている。登るにつれて水量が増えてくるが、まだ氷が残っているのが気になる。そろそろ入ってみますかと沢登り開始。ところがいくらも行かないうちに沢は氷に覆われてしまった。水が流れている所より、氷に覆われている所のほうが多く、これを沢靴でどう登ればいいのでしょうな状態になってしまった。結局5メートルくらいの滝を一つ登って沢登りは中止となってしまった。
日本のように雪が積もった雪渓と違い、こちらは沢の水が凍った氷がそのまま溶けずに残っている感じ。だからスノーブリッジのように部分的に高く残っているのでなく、スケートリンクが低く均一に残っている。
沢登はできなくなってしまったけれど、谷沿いの道はまだ続いている。せっかくなのでそれを辿って行ける所まで行くことにする。
午後になり雨が降ってきた。S字のゴルジュ出現、入り口に8メートルチェックストン滝。道もなんだか不明瞭、ゴルジュの中までは続いていない様子。この先はあの滝を越えて行かなければならないのか、暗いゴルジュの中は下からでは見ることができない。たいした滝ではないのに、一人だと恐怖が三倍増しくらいになってかなり弱気、取り付く気にならない。恐ろしくてたまらない、逃げ出したくなった。とりあえずこの滝は止めよう、でも一応不明瞭でももう少し道を辿ってみようではないか。
なんと道はすぐにしっかりしたものとなり、尾根を一つぶち抜いてゴルジュの向こうに続いていた。
尾根ぶち抜きを過ぎると気持ちのいい樹林帯となる。それまでも樹はたくさん生えていたが、森の雰囲気がまるで違う。うまく表せないけれど兎に角違うのである。その尾根をぶち抜くまでほとんど人が入っていなかったのかもしれない。
雨も強くなってきた、対岸に立派な洞穴を発見。早いけれど今日はここまでとした。
大きな穴で、中にツエルトを張り、焚き火もし、塗れた物を乾かすこともできた。牛の糞がいやだったけれど、雨なんかへっちゃら。でも猛獣が怖くて夜も焚き火は消さなかった。
5月1日
洞穴7:30―中台12:00―14:40西台下―17:45金河口下
ゆっくり起きて洞穴を出発。湖上溝の上部は小さいが滝が連続している。でも滝といっても全部凍っていて、アイスクライミングができそうなくらい。
道は北面斜面についていたが、雪が残っていて、地下足袋でキックステップはあまりにも辛い。さてどうしたものかと対岸を見ると、向こうは南向きで雪なんかない。よし、あっちから登ろうと適当に取り付く。急な斜面だけれど藪もなく、稜線まで到着できた。
昨日の雨は稜線で雪になっていたよう、稜線を中台まで目指すが風がものすごく冷たい。風がなければ太陽がでかい。
本当は中台を過ぎてからまた沢に下りるはずだったのだけれど、夕べ寒かったし、一人でまた道のないわけのわからん所に入るのは嫌になっていたので、西台への稜線散歩に変更。途中10人くらいの韓国人パーティーに出くわした。こちらは一人で足は地下足袋、リュックにヘルメットぶら下げて、完全にジャパニーズサワノボラーの下山スタイル、当然変な目で見られた。
夕方に下山し金河山荘に泊まる。三回目でもう顔なじみ、地下足袋はここでも人気だった。
>5月2日
金河口―西合営―北京
朝一番に一日一本のバスに乗り西合営へ、北京に戻り軽く観光。4日の飛行機で上海に戻った。
まさかまだ氷が残っているとは思わなかった。沢登がやりたければ七月以降か、特に何といったものがあるわけではないけれど、山に入れば水は流れているので沢登りはできる。今回歩いた湖上溝は、下部は五メートルから十メートルくらいの滝がたまに、上部は同程度の滝が連続といったところであった。
冬の間は相当冷え込むのだろう、それで降雪がほとんどないわけで、やはりこの山はアイスクライミングだと思う。主要な谷の本流には大きな滝がないけれど、それに落ちているルンゼはかなり立っており、水が少しでも垂れていれば冬の間にかなりアルパインなクライミングができると思う。春節の小五台山へのアプローチはⅥ級のグレードに達するが、機会があれば冬にまたやって来たいものである。
カッチンから写真もらいました。紅軍戦士。それぞれどこなのかしら。(by管理人)