「死ぬまでに一度は行きたい、でも死ぬのはゴメンだよ」・・・でお馴染みの槍ヶ岳の名ルート、北鎌尾根に挑戦しました。
年末年始山行に行く前に、まずは無雪期を登りましょう、という事で錦秋の好天日を狙い、日帰りでの“ド根性体力任せ山行”です。
日程:2015年10月4日
メンバー:マスダ
10月4日
00:00新穂高温泉駐車場 ~ 05:30槍ヶ岳山荘 ~ 07:00水俣乗越 ~ 08:30北鎌沢出合 ~ 10:30北鎌のコル ~ 12:00独標 ~ 15:30槍ヶ岳山頂 ~ 16:00槍ヶ岳山荘 ~ 22:00新穂高温泉駐車場
新穂高温泉 ~ 槍ヶ岳山荘
日帰りを想定すると“早朝発”などと悠長なことを言っていられないので、真っ暗&冷え込む闇の中を先ずは槍ヶ岳山頂を目指して一般道を歩き出す。
穂高平を過ぎて、槍平小屋までは暗闇の3つ沢を越えていかねばならないので、目印や橋の位置が分かっていないとタイムロスに繋がる。
2週間前、同ルートで北鎌尾根に挑戦しようとした某登山者が滝谷の橋を見逃した挙句に渡渉で失敗して右足を浸水させ、その後の凸凹道で膝を負傷して志半ばに散っていったらしい。あくまでウワサ。
槍平小屋 ~ 槍ヶ岳山荘 ~ 水俣乗越
まだ宿泊客が寝静まる槍平をヘッドランプをビカビカさせ、小屋脇をズカズカと通過。
北鎌尾根に向かうルートは幾つか存在するが、新穂高側は槍平を過ぎたあたりまで水場の心配がない。
広大な飛騨沢を駆け上がっていく頃、ようやく空が明るみを帯びてくる。
どう頑張っても帰りにもヘッドランプの世話になるので、予備電池は必須。
飛騨乗越へ抜け出すと真正面から今まさに昇らんとする朝日と対面する。
ただの槍ヶ岳登山ならば、このまま日の出を待って山頂へ上がって記念撮影といくトコロだが、今日の目標には未だスタート地点に立ってすらいない。先を急ぐ。
「こんなに長かったかしら?!」と思う東鎌尾根のアップダウンを繰り返して水俣乗越を目指す。
水俣乗越 ~ 北鎌沢出合
やっとこさ水俣乗越まで到着。あたりはすっかり明るくなっている。
ここから先は一般道を離れてバリエーションルートの始まり、始まり。
天上沢へ向けて踏み跡はあるが崩れやすい急斜面を降りていく。
ストックの手助けを借りて、ザラザラの砂利斜面から斜度の緩んだゴロゴロ大岩帯を通過。
せっかく貯蓄した標高をあっという間に浪費。お陰様であたりの紅葉が綺麗だこと、綺麗だこと。
左手に北鎌尾根を見ながら下流へ暫く進むと、北鎌のコルへ突き上げる北鎌沢が確認できる『北鎌沢の出合』にたどり着いた。
北鎌沢出合 ~ 北鎌のコル
北鎌沢に入ってしまうと引き返す事自体が困難になってしまう。
引き返すならば出合がターニングポイントとなるが、先々週悲鳴を上げた膝と足首はガッチリ補強したテーピングのお陰で、まだ鼻歌(膝歌?)が聞こえてくるほど余裕がある。
水流のある北鎌沢は、登り出してスグに左俣と右俣に分岐があり、事前情報に従い右俣に進路をとる。
右俣には幾つかの枝沢分岐が現れるが、見通しが効けば稜線の鞍部を目指して進めば行き詰ることはない。
時折、足場の巨大な岩を崩してヒヤリとしながら暫しの急な沢登り。
日差しタップリですっかり乾いているからよいが、もしコレで岩が濡れていれば進むのも戻るのも一苦労だ。
コルの手前、悪名高き『クライマーホイホイ』に引き込まれないように右前方の岩壁から距離をとって進む。
最後の詰めは草の生えた安定した足場をよじ登っていく。
テント2~3張分のスペースがある『北鎌のコル』に到着した。
思っていたよりも順調に到達してしまった。『クライマーホイホイ』にホイホイされなかったのは「オメェはクライマーじゃネェ!」・・・と言われているようで若干自己嫌悪に陥る。
出合から2時間。既にヘロッヘロだが、まだ全行程の半分過ぎ・・・といったトコロか。とほほ。
北鎌のコル ~ 独標
一息ついて後半戦に取り掛かる。
先ずは最初の難所と言われる『独標』に向け、明瞭で歩きやすい踏み跡を辿る。
標高2900mの堂々とした佇まい独標は尾根の一ピークにしておくには惜しいほど。
知らない人に「コレが槍ヶ岳山頂だ」と言っても疑わないだろう。
とても真正面からは登れる気がしないので、ココはトレースに従って進行方向右手、千丈沢側から回りこむルートをとる。
先人の足跡が確認しやすい無雪期で良かった・・・。
垂直の壁にえぐられたように走る噂の難所『逆コの字トラバース』を通過する。
通過してみると、それほどの難易度はなく、むしろスグ先の岩壁を回り込んでいく箇所のほうが余程怖かった。
独標 ~ 槍ヶ岳山頂
独標を回り込むと前方に槍ヶ岳山頂がその全容を現してくれた。
槍の穂先に向けてゴツゴツとしたピークが連続しており『THE 岩稜』といった感じで非常に格好良い。
独標はP10の呼び名が振られており、山頂まではあと5つのピークを越えていかなくてはならない。
稜線上に進める所はピークを踏み、直登が困難な箇所は左右に下って回り込んでから稜線に進路を戻す。
回り込むルートは殆どが進行方向右手、千丈沢側が歩きやすかった。
左手の天上沢は切れ落ちていたり崩れやすかったりしてトラバースには不向きな事が多かった。迷ったら反時計回りだ。
繰り返される登下降に、もういくつピークを越えたか分からなくなってくる。
ただ救いは前方に雲がなく、確実に槍の穂先が近づいてきてくれる為、疲れていても戦意を失うことなく足を進める事ができた。
山頂の大槍の手前、尾根が広くなった最後のビバークポイント『北鎌平』周辺にやってきた。
まだ明るいので進軍を続ける。北鎌尾根も後はメインデッシュを残すのみだ。
大槍の手前になると、尾根上はゴロゴロした岩の重なり合うコレまでと一味変わった表情を見せる。
岩の鱗を渡り、頂上へ向けて聳え立つ最後の岩壁登攀を開始。
岩はガッチリ安定しており、何処からでも登れそうなので真正面から突っ込んでいく。
カンタンな登りをこなしていくと、大槍登攀の難所『二段チムニー』が立ちふさがる。
人幅程の岩の隙間に身体をねじ込んで登らなくてはいけないので、大荷物だと一苦労だ。
そこそこ垂直だが一番苦しい所にはお助けスリングも垂れ下がっているので、ロープを出して登る程の難易度でもない。
下部チムニーを越えると上部に二段目のチムニーが待ってくれている。
側壁を上手く使えば隙間に身体や荷物をガリガリせずに登れるので、難易度的には下部より易しい。
二段チムニーを抜けて、人の声が聞こえる山頂へよじ登る。
北鎌のコルに登ってから5時間。山頂にいる他の登山客から拍手で迎えられながら北鎌尾根踏破。
距離にすれば2㎞程だと思うが、登ったり降りたり休んだり迷ったり・・・と、なかなかの重労働だった。
槍ヶ岳山頂 ~ 槍ヶ岳山荘 ~ 新穂高温泉
山頂から槍ヶ岳山荘へ降り立ち、ほっと一息。
もうシーズンも終わりに近づきルートも空いていたので、渋滞に巻き込まれることなく明るいうちに山頂を踏む事が出来た。
ビバークを想定して北鎌出合から汲んできた水2リットルも結局飲むことなく、トレーニングの負荷として役目を終えてくれた。
槍ヶ岳山荘を後にして、夕闇せまる飛騨沢へ下降する。
疲労と睡魔に加え、一般道ということで少々気も緩み、スタート地点に戻るまで6時間近くかかってしまった。
トータル22時間。長い一日だったが、冬山に変わる前の北アルプスを満喫できて良かった。
北アルプスから『栂海新道』を通って日本海まで歩きました。
日程:2014年8月13~15日 二泊三日
歩きニスト:マスダ
8月13日
07:30白馬八方駐車場 ~ 08:00八方池山荘 ~ 10:30唐松岳山頂 ~ 12:30不帰キレット ~ 14:30天狗山荘
アルパインクライマーたるもの、やはり麓から自らの足で高度を稼がなくてはいけません。
登山口から山頂に至るまでの行程全てに真摯に向き合ってこそ、岳人のあるべき・・・
・・・
・・・
・・・
ゴンドラ、楽ーーーーッ!!
・・・スミマセン、ココからは真面目に歩きます。
不帰嶮に差し掛かった瞬間、アレほどいた登山者が忽然と姿を消しました。ミステリー。
独り静かに黙々と鎖場、キレットを越えて天狗山荘へチェックイン。
8月14日
04:30天狗山荘 ~ 07:30白馬岳山頂 ~ 09:30雪倉岳山頂 ~ 13:00朝日小屋
白馬三山を辿って北上。
4月に新入り5人パーティで挑戦した『白馬主稜』。
冬山との表情の違いは驚きの一言です。
賑やかな白馬岳山頂を過ぎると、またしても黙々エリアに突入。
花畑、湿地帯を走る木道、緑豊かな道のりの先に朝日小屋が見えてきた。
8月15日
02:30朝日小屋 ~ 03:30朝日岳山頂 ~ 5:30黒岩平 ~ 08:00栂海山荘 ~ 11:00白鳥小屋 ~ 15:00栂海新道登山口 ~ 16:00親不知海岸 ~ 16:30JR親不知駅
前日に小屋のオバチャンが他の登山客と「一日じゃ栂海新道を抜けるのはムリ!」と話しているのを聞いて・・・・・・マスダは静かに燃えました。
不可能を可能にしてこそのアルパインクライマー。
クライマーとは何時の世でも、無理だと言われる難ルートに挑んできたのでは無いでしょうか?!(←つい一昨日ゴンドラに乗って大喜びしています。)
朝日岳山頂は360度の大展望!・・・真っ暗なうちに通過。
でも遠くに海岸沿いの街明かりが見える。
明るくなり始めた山道をひた進む。朝日を浴びる稜線が何とも言えない。
さらば、北アルプスの山々。
遠くに見える日本海が近付いて来る・・・・・・ようでなかなか近づいて来ない。
そろそろ膝が弾け飛ぶかな・・・?と思う頃、ようやく登山口が。
海を、そして親不知駅を目指して歩道のないアブナイ国道をウイニングウォーク。
お疲れ様でした。
・・・当初、計画書では3泊4日の予定だったのですが、出発が近づくにつれて天気予報が暗転してくれるので、雨雲から逃げるように道程を急ぎました。
結果、最終日の夕方のみ雨にやられましたが、山の上では概ね曇りではあったもののUV対策を心配しなくて良い快適な山行になりました。
大自然のど真ん中を行く美しい稜線歩き。
晴れていれば更に素晴らしい景色が広がっていた事でしょう。
栂海新道は長いだけではなく、無限に繰り返されるアップダウン、低標高特有の蒸し暑さ、道のヌカルミ等など精神的にイヂメてくる要素の多いルートでした。
ただ約3000mから0mへ到達は、普段の“登り詰める”とはひと味違った充実感が得られました。
2014/7/5~6 CL:盛山(記)、他1名
特に大した内容ではないので報告あげるもの迷いましたが、まつど岳人は一応こんな事もしているよ的に報告をUPします。
珍しく一般道登山です。
テーマは「癒し」と「復活」です。(なんのこっちゃと思われるかも知れませんが、人生いろいろあったのですよ・・・)
初めは単独の予定だったので、池ノ谷でもつめてその辺りのバリエーションルートを眺めて、適当に幕営して剣を満喫するつもりでしたが、諸事情によりバリエーション初心者(山はそれなりに登ってます)の妹を連れて行くことになり、梅雨時の微妙な天気も手伝って、大人しく早月尾根で登頂することに。
ところが雪渓が嫌らしい感じで残っており、これは雪渓処理に慣れていない人は厳しいね~といった感じでした。
<記録(ちょっと記憶が曖昧)>
7/5(土) 馬場島6:00-11:30早月小屋
7/6(日) 早月小屋4:00-9:00山頂9:20-12:30早月小屋13:00―16:30馬場島
<内容>
1日目はアプローチのみ。天気も微妙な感じで時折雨が降るが、時々晴れたりでまあなんとも。
途中で毛虫の襲撃にあいザックが毛虫だらけ。
この季節は要注意。
あとはせっせと登って行けば少し雪渓が出てきてほどなく早月小屋に到着。
昼前に到着であとはダラダラと過ごす。
小屋はまだ営業前だったけど、しっかりテンバ代は取られました・・・
夕暮れ時に雨が上がり、青空が見えてくる。
明日の天気は期待出来るかも。
夕食はオシャレ山行をしている妹レシピで何やらこだわった食事を頂き、久々に兄妹でいろいろな話をしつつ就寝。
2日目。
起きてみると・・・ビミョー。ガスってます。
行かないのもなんなんでとりあえず食事をして出発。
雨が降っていないだけましか。
大げさかなと思ったけど、ハーネス・ギア・ヘルメット装着で出発。
雪渓の登り。
なんてことないなと思っていたら、ルートが分からんではないか。
ガスっているし、先が良く見えんな・・・
適当に進む・・・結果ハマッてザイルを出すことに。
まあ、妹はビレーを知らないので私はフリーですが。
さすがに山で妹に死なれるのは寝覚めが悪いので安全第一です。
腐った雪渓の急斜面をザクザク登り、稜線に出て見たり、それらしい踏み跡を辿ってみたりしながら高度を稼ぐ。
結局登りでザイルは3ピッチ、1ピッチ、1ピッチと3回くらいところどころ使用して、しっかりした夏道になりました。(結構雪渓に埋まっている)
ザイルは主にトラバース斜面での確保ですが、確実に滑落停止技術をマスターしている人でないのであれば、ザイル確保した方がよろしいでしょう。
雪が腐っているのでズルズルと落ちる可能性があります。
場所によっては落ちたらサヨナラです。
嫌らしい雪渓を登りきればあとは基本は一般道なので、特に難所もなく登って行く。
雪渓で苦戦している間にガスは徐々に薄くなり、山頂が見える事には素敵な青空が。
そしてようやく山頂到着。
山頂では海まで見える眺望。
梅雨時期にこれは奇跡でしょう。
山の神様、ありがとう。
これからも強く生きて行こうと思います・・・と心機一転して山頂を後にする。
ちなみにこの日は誰もおりませんでした。
微妙な時期なので皆登らないのかな。
さて、下山です。
山頂での晴天はどこへやら剣はまたガスのなかです。
雪渓のトラバースは一応確保。
っと、妹ずり落ちました。
ただのボディビレーだけど簡単に止めて事なきを得て、兄としての尊敬を得る。
そんなこんなで雪渓に時間を取られ、予定よりだいぶ遅くなって早月小屋に帰ってくる。
結局、下山したのは16時過ぎており予定よりだいぶ時間がかかった。
<総評>
残雪の早月尾根は一般登山者は止めた方がよいレベル。
雪渓の歩き方・滑落停止技術は必須。
そうでなければザイルでの確保が必要でしょう。
アルパインクライマーなら特段問題ないレベルだが、12本爪アイゼンとピッケルがあった方がよいです。
2014年7月1日(火)
メンバー:ビン
昨年の南米・Aconcaguaで、高所登山を体験し
体力、そしてそれをベースにした気力の重要性を
痛感しました。無雪期は、ついつい岩ばかりに
なりがちですが、30代に入りより高度な登山を
実践するにあたり、昨年から、こういった
『トレーニング』を積極的に取り入れています。
行程・・・3:30富士河口湖町~6:30精進湖登山口~10:00鬼ヶ岳
~13:30黒岳~14:30/15:00御坂峠~18:00富士河口湖町
残業が長引き、1:00出発のつもりが仮眠で寝坊し(苦笑)、
結局出発は3時半に。
まずは寮から約20km離れた精進湖登山口まで
一般道を移動。出発直前に朝飯を食べたので、
走ってしばらくすると腹の調子が悪く、近くのトイレへ。
その後もしばらく腹が・・・結局ほとんどの区間を徒歩で
精進湖へ到着。
ここから登山道をひたすら移動ですが、
この御坂山塊の尾根登山道は、前半部分が
人通りが少ないためか、道も細く藪も多いので、
なかなかスピードがあがらない。
今回は報告名が『ロングトレイル』なんですが、
当初は『トレイルランニング』、つまり走って
移動を考えていました。ただ、出発直後の腹痛と
昼前から右足に違和感が出始めたので、
歩きに変更。
それでも、ただ漫然と歩くだけでは良くないので、
今回は『休憩』のタイミングに気を使いました。
今までは『疲れたら休憩・空腹を感じたら食事』という
スタイルでしたが、やはり冬や高所などでの
長時間行動を意識すると良くない・・・ということで
『1時間毎に5分休憩、150ccの水分と80kcalの補給』を
義務付けてみました。
方法を変えたという先入観があるかもしれませんが、
結果的に全身の疲労は少なかったと思います。
ようやく御坂峠に到着し、さて今日は
ドコまで行けるかと考えて休憩していると
雷鳴とともにドシャ降り・・・。
ま、無理してケガしても本末転倒なので
本日はおとなしくここで切り上げ。
ただ、御坂峠の下り+登山口~寮までの
8kmは正直、足が痛くツライ・・・。
ヘタリながらも夕方無事。
一般道26km+登山道24km、合計約50kmでした。
【総括】
今回も改善点としては・・・まず出発前のバタバタ。
ま、これはトレランに限ったことではないですが。
あとは、長時間・長距離で移動する際に
痛めやすい足先や膝などの強化でしょうか。
12時間以上の長時間行動では、平均すると
瞬間的な強い運動強度はあまり行わないので、
今のままだと、心肺機能の限界よりも先に
上記の部分に痛みが来るのが現状。
まずは20km前後のランニングを日常で
徐々に入れていく予定。
海外や、冬の厳しい山行を重ねるにつれ
毎回痛感することは『歩く能力』の重要性です。
『登山』の上に成立する『アルパインクライミング』は
『登山の技術・体力・経験』なくしてありえない。
でも、自分を含めて『クライミング能力』を
日々鍛える社会人クライマーはたくさんいても、
『歩く能力』を研鑽するクライマーが
日本にどれだけいるだろうかといつも考えます。
それはただ単に『山に入り、重荷を背負い、歩くこと』は
当然として、さらにその先に進むために、
+アルファで日常に取り入れて、何年もかけて
ようやく実際の山行で活かせるもの。
今後も無雪期は、クライミングや沢登り、
その他のスタイルとバランスを図りながら
長時間行動のトレーニング・山行を、
続けたいですね。
2014年4月12日(土)
メンバー:妹尾
冬シーズンも終わったが、気になるアイスルートが
あったので、その偵察と岩に向けて体を絞る目的で
富士山に行ってきました。
よくよく調べると、全然氷結適期ではなかったので、
単純な足腰の鍛錬だけになりましたが、
天候もよく、なにより人工物の一切ない
ちょっと海外の高峰の雰囲気を漂わせる非常に
よいルートでした。
行程:馬返し5:30~6合目8:00~13:30お鉢稜線
~6合目15:30~17:30馬返し
あやうく寝坊しそうになりつつ、やや遅めの出発。
馬返し駐車場には、バイクツーリングのテントと、
軽トラのみ。
2月の大雪の影響で、この時期としては残雪豊富。
途中、3合目付近でテント1張。
風もほとんどなく、順調に6合目まで。
吉田登山道西側の樹林帯が切れるあたりで
屏風尾根に取り付く。
取り付きの見た目は傾斜が強そうだが、
せいぜい30度くらいか?
吉田登山道に人影を2名みるが、7合目付近で
引き返していった。
尾根上に出ると、噂どおり西風をモロに受ける。
春といっても、すぐに体の右半分ガンガン冷える。
しかし、人工物が一切ない富士山は、海外の高峰の
雰囲気が味わえる。
しかし、この雰囲気も一長一短で、快適な雪の斜面が
続くのだが・・・いかんせん長い。ホント長い。
吉田口登山道ほど、ジグザクでないので、
快適に高度を稼げるが、ふくらはぎはパンパンになる。
上部になると、いよいよ耐風姿勢が必要になるくらい
風が強くなる。快適な雪の斜面とはいっても、
言い換えればやや柔らかいアイスバーンが
延々2000m続くという意味でもあるので、
滑落は許されない。まあ、冬富士はどこもそうですが。
結局、3500m付近で尾根から吉田沢へ逃げる。
広大なクーロワール状の吉田沢は風も穏やかで快適。
そのまま稜線(お鉢)へ飛び出す。
稜線も、思いのほか風が強くなく写真を数枚とって、
懸案のアイスルートの場所だけ確認。
当然時期が早いので、氷結の『ひ』の字もなし。
下りは吉田口登山道をサクサク。
ただし足はガクガク。
富士山では毎回足腰が鍛えられます。
ちょうど12時間で駐車場に戻りました。
**************総括****************
大きな雪の斜面を駆け上がりたいなら、
このルートですね。
一応、まだ冬富士の範疇なので
ダブルアックスで登りましたが、
(ほとんどストック代わり・・・笑)
ピッケル1本で問題ないです。
ただ、上記にも書きましたが
西風をモロに受ける点、滑落したら
アウトな点は注意でしょうか。
次回は吉田沢を、文字通り駆け抜けたいな・・・。
メンバー:CL 梅澤、古川(記)
行程
6日:扇沢-(0+15)-ダム-(3+00)-内蔵助平-(3+00)-真砂沢ロッヂ幕営
7日:真砂沢ロッヂ-(2+30)-八ツ峰近く幕営地-(0+10)-八ツ峰Dフェイス-(2+00)-6峰頭-(0+30)-幕営地
8日:幕営地-(0+10)-Cフェイス-(1+20)-6峰頭-(2+00)-八ツ峰の頭-(1+00)-剱岳山頂-(0+40)-池ノ谷乗越-(0+30)-幕営地-(1+00)-真砂沢ロッヂ幕営
9日:真砂沢ロッヂ-(6+00)-ダム-(o+20)-扇沢-(5+00)-自宅
久し振りのフル装備を背負っての歩き。。。
辛かったです(- -;)
前夜発で扇沢にて仮眠。
始発のトロリーバスで黒部ダムへ
後から知ったのだが室堂から入れば歩きは
かなり楽だったとか∑( ̄□ ̄;)ダマサレタ!!
ダムからは内蔵助平を経由して真砂沢へ。
本当は八ツ峰近く幕営地まで歩きたかったが、
その体力は残ってなかった。
真砂沢のテン場はトイレもあるし水も取れるしで非常に快適でした
大学の山岳部が沢山いた。
翌日4:30起床。6:00発長次郎谷の雪渓を歩く。
1+30くらいで行けるかなと思っていたがなかなか着かない(- -;)ザック重イ
なかなかの急登で前日上がらなくて良かったと心から思った。
登攀準備をしDフェイスへ。
Dフェイス取付きは雪の塀のような状態になっており、
入れるか微妙だったが近づいてみると一箇所だけ雪が繋がっており無事取付きへ。
ここでやってはいけないミス
富山大ルートを登攀予定だったのだが手前に残置スリングが沢山あった為しっかり確認せずに取付き、登り始めて少しして異変に気づく梅。
明らかに難しい∑( ̄□ ̄;)!!!どう考えてもⅣ級じゃない。
梅曰く、今回の山行で一番頑張ったという奮闘ぶりもどうやらここは左ルート??たぶんみんな間違って取り付いて敗退下降するためにスリングが沢山あったのだろう。上部はどう見ても人工(?)ということで1Pで懸垂。
1時間程ロスしてしまった。ちゃんと下調べして壁周辺をしっかり見てから取り付きましょう(反省)
正規ルートはトポのグレード通りという感じ。脆い岩、ボロい残置ピトンにフリーの時のような思い切った登りじゃなく慎重な登りが続いた。
特に問題なく6峰の頭に到達。下降はAフェイスの方へ歩いていき1P懸垂で5・6のコルへ降り立つ。
本日の登攀は終了。明日からの計画をテントにて会議。
今回の計画ではDフェイスとチンネ左稜線を登攀予定であったが、ここまで来て剱岳のピークを踏まないのもなぁということで、明日はCフェイス→八ツ峰上半部縦走→八ツ峰の頭→北方稜線→剱岳→北方稜線→池ノ谷乗越→長次郎谷右俣→テントというプランに決定。
時間を見ながら厳しいと判断した場合はその場で判断ということで。お隣のテントの方が八ツ峰上半部のトポを持っており夜の間お借りすることができたので大変参考になりました。
翌9日3:30起床。朝食を済ませ準備をしようとするが外はかなりガスっている
10m先のテントも見えないような状態で、もちろん6峰は全く見えない、、、これでは天気の判断もできないので少しガスが晴れるのを待つ。予定より一時間程経ったところでやっと6峰が見えてきた。
日も昇り気温も上がり始めれば晴れてくるだろうということで出発!!
本日の行程はなかなか長いのでCフェイスもダッシュで抜ける。
そこから6峰の頭に移動。八ツ峰上半部縦走開始。八ツ峰上半部は所々懸垂&クライムしながら稜線を行く。特に難しい所もなく懸垂点もスリングが沢山あって迷うことはない。八ツ峰の頭まで行き一回の懸垂で池ノ谷乗越に下りる。
ここから剱岳山頂までは不要な物をデポし北方稜線を歩く。遠くから見るとまくのかな?と思っていたが乗越しからすぐ↓のところから登って行けた。
北方稜線はなかなかガレていたけどクライム&クライムダウンを繰り返しながら無事一時間ほどで山頂に到着!!無事ピークハント
下降は北方稜線同ルートを戻り、長次郎谷右俣から雪渓を下降。なかなかの急登なので雪渓歩きが心配であったが、アイゼン履いていれば大丈夫だった。
Cフェイスから元の計画にあったチンネ左稜線を継続して北方稜線に出ても時間的にはいけたなぁと思ったけれど、次の日の歩きもあるし結果的には今回のプランで良かったと思う。体力も残っていたのでこの日のうちに真砂沢ロッヂまで下降することにした。あれだけ辛かった雪渓も下降は快適。1時間くらいでテン場、初日と同じところにテント設営。
最終日は初日と同様のルートでダムまで歩く。往路よりは楽だったように感じた。
無事怪我もなく全行程完了
前の槍の時は長い歩きで膝がやられたが、今回は痛みもなく歩ききることができた。
普段のフリーとは全く違った山行ではあったけれど、無事剱岳のピークも踏めたし四日間天気にも恵まれ楽しい山行となった。
次はどこに行こうかなぁ。
梅古
剱沢雪渓↑
八ツ峰から剱岳本峰→
2012年7月4日(水) 日帰り
メンバー:S尾(記)
前日に山梨は全域で土砂降り。当初はパートナーと
岩に行く予定でしたが、乾くか微妙な感じで
『とりあえず行ってみる?』という楽観的な
(というか諦めの悪い)提案は見事却下苦笑。
夜には東京で部会に出席せねばなんで瑞牆あたりは
移動に時間がかかるし・・・一人だし・・・。
ということで、今年無雪期シーズン初の富士山に
体力トレーニングを兼ねて行ってきました。
日程:4:40馬返し~7:30五合目~11:30八合目~15:10馬返し
今回はただ単に富士山登ってもツマランやろ、ということで
通常の日帰りトレッキング装備に30kgの重りも出血大サービス(笑)。
トータルで35kgオーバーは久しぶりに担ぐ重さで肩に腰に
食い込みまくりんぐ。
当然ペースはあがらず、抜かれまくりでライバルは五合目付近を
うろついてたバアちゃん。いつもの吉田口登山道もなまった体には
違う風景に見えます。それでも歩き方や呼吸の仕方を意識する
機会なんて滅多にないので、なるべくペースを崩さず登る。
天気は快晴で先日山開きを終えただけあってハイシーズンほどでは
なくても登山者で賑やか。登山道付近の至る所で来るハイシーズンに
備えて山小屋関係の荷揚げや工事が行われていました。
しっかし・・・外国人多すぎでしょ(笑)。
新緑の緑、残雪の白、地面の茶色、空の青。富士登山の中で今が
一番気持ちのいい時期かもしれませんね。
9合目ぐらいまで行けるかなと思ってましたが8合目で時間切れ。
重りの半分以上はペットボトルの水なので
『水道水から富士山の水に大出世だな。』と自然に還し
身軽に下山。されど夜の部会に間に合うか微妙なので
毎度のごとく疲れた体に鞭打って急ぐ。
馬返しでは駐車場目前でボランティア?のおばちゃんに
お茶を勧められ、冷たいお茶を2杯も頂く。ご馳走様でした。
そうそう、その時紹介されましたが頂上での写真を添えて
富士吉田市内の各所で申請すると登頂証明書なるものが
登録番号入りで発行されるんですね。
ま、興味ないですが。(興味ある方はググッてクダセイ。)
【総括】
積雪期には一泊二日ともなればかなりの重さの装備にラッセルなど
山に行くだけで体力がついてたもんですが無雪期だとどうしても
重たい荷物とは無縁になりがちです。
やはりアルパインクライミングをやる以上、必要な体力養成は
一番メンドくさいけど、一番重要だったりもします。
そういう意味ではランニングなど日常のトレーニングも有効ですが、
やはり重たい荷物を実際担いで行う山歩きが一番効果的ですね。
忙しいくただでさえクライミングの時間が少ない方には
歩荷なんて後回し、というのも仕方ないわけですが、
もし時間ができて、かつクライミングが難しいとき
こんな山行も悪くないんじゃないんでしょうか?
2012年6月20日 日帰り
メンバー:S尾(記)
前夜に日本列島台風縦断。予報ではその後も台風一過な晴天は
微妙な雰囲気で、岩も乾かないだろうし沢は危険すぎるし、
まあ、久しぶりに引きこもり生活しますか・・・
・・・なんて発想はありません。
最終兵器、"縦走"があります。(まあ、悪天にも限度はあります)
というワケで、なるべく安く済ませたいので車使わず済む
御坂山地の縦走に出かけました。
20日:3:45富士河口湖町~7:30精進湖~9:45王岳
~15:20黒岳~16:00御坂峠~18:30富士河口湖町
やや寝坊して出発すると満天の星空。やっぱ岩行きゃよかったと
後ろ髪ひかれつつ出発。精進湖までは普通の道路を延々歩くので
正直苦痛。西湖では台風の影響で通行止めのため迂回する羽目に。
ふと後を振り向くとそこには・・・
"ドン!"(尾田栄一郎風に)
『父さんは竜の巣の中でラピ〇タを見たんだ!』
まあ、お約束といえばお約束ですが、日本国民の義務みたいな
モンなんで一応・・・。舗装路歩きで疲れていましたが
テンション上がりました。
精進バス停入り口から川沿いに登山口に入る。
やはり前夜の台風の影響であちこちに生々しい倒木のオンパレード。
気温も高めでしたが、風も強いのでまずまずのコンディション。
稜線にでてから暫くはあまり人が歩いていないだろう薮っぽい
登山道を前進。ときどき開けてくると久しぶりの縦走のためか
ついつい走り出してしまう。トレランも悪くないですかね。
時々道端のイバラに引っかかれながらもガンガン進む。
晴れだった天気は、いつのまにか雲の中に入ったのか
ガスで視界不良な感じ。しかし金山まで来ると
道も歩きやすく、時々晴れ間も出てきました。
時々眼下に河口湖とその周囲の町並みが見えて・・・
『みろ、まるで街がゴミのようだ!』とついついラピ〇タネタで
引っ張ってしまいますね苦笑。
本来なら三ツ峠まで足を伸ばすつもりでしたが、
寝坊+台風の影響+体力不足=途中リタイア必至コンボの完成です。
最後の方は結構ふらふらで御坂峠では休憩中に昼寝の始末。
最後に8kmの一般道歩きが堪えましたが
とにかく歩きまくった1日でした。
翌日は珍しく疲れた寝起きで、あわや仕事に遅刻・・・
『40秒で支度しな!』
なんて最後までラピ〇タネタでお後が宜しいようで(笑)。
なんの報告だよ・・・。
【総括】
結局、一般道路28km+登山道22km=計約50km、標高差1000mに
約15時間かかりました、疲れた・・・。
普段、それなりに有酸素トレーニングはしてる"つもり"でしたが、
やっぱり登山の体力は登山で鍛えるのが最良かつ最短の道ですね。
ランニングとは違って、ちょっとした足の運びや踏ん張りなど
登山の歩き方・足腰の実力を高めるために最低月イチぐらいは
しっかり山を歩きたいものです。アルパインクライマーですしね。
歩けて・担げて・登れる、そんな強い岳人になりたいものです。
2011/10/1
L:盛山、他2名
<行程>
大平牧場 9:30--10:20国師が原―10:30錦晶水―国師が原―11:00扇平――12:00山頂――13:50高原ヒュッテ(荒廃した無人小屋)――15:30大平牧場
<報告>
久々の山なので、リハビリ程度にハイキング。
山頂直下の岩場でクラッククライミングを試そうかな~とか思ったが、恥ずかしいのでやめた。
残念ながらガスって景色は見えず。
私は慣れっこなので、別に構わないが、皆さん残念そうでした・・・
その他写真はWebアルバムへ
http://picasaweb.google.com/moriyama.m/
2011年4月29日(金)~5月6日(金) 前夜発7泊8日
メンバー:妹尾
正直、今年の冬シーズンは不本意でした。ゲレンデではアイスを頑張って少しは上達しましたが、所詮ゲレンデはゲレンデ。やはり岳人のはしくれとしてはアルパインルートの完登があまりにも少な過ぎるワケなのです。
そこへ来てさらに冬の締めくくりの後味の悪さ。震災も勿論ありますが、それ以外にも”なんで?”と納得できない理由もあり、まさに宙ぶらりんで終わりました。本来なら去年のように岩のツアーでも行きたい所ですが、ここはこのモヤモヤを消すべく雪山に向かいたいと思い、選んだ先は・・・そう、今流行り?の黒部横断です。まあ、厳冬期に行われている昨今では残雪期ど真ん中のGWにやるのは決してハイレベルではないかもですが、今の妹尾にとっては十分トライの価値あるもの。なんとかへロヘロになりながらも久しぶりに充実した単独行となりました。
28日 18:00中央道日野バス停~22:00JR信濃大町駅
高速バスで信濃大町へ。北アの麓とはいえ夜も優しい風が吹く。駅前の片隅で仮眠。
29日 6:10信濃大町駅~7:00JR簗場駅~8:20大谷原登山口
~13:30第1岩峰手前斜面
朝一番の電車で登山口の最寄り駅である簗場駅へ。タクシーはサイフに痛いので2年前と同様、一つ里山を越える。意外なことに妹尾と同様にここから鹿島槍を目指す単独登山者がいた。なんか嬉しいがすぐ見失った。
大谷原登山口の駐車場には10台以上の車が停めてあった。そそくさと準備して出発。幕営装備、鹿島槍東尾根用のガチャ・ロープ、10日分の食料・燃料で愛用のガッシャはそこそこ膨れている。ただ、まだまだ入る余裕があるところはさすが。歩き始めてすぐに『東尾根冬用登り口』という看板を見つける。正直、嫌だなと思った。一般登山道なら理解は出来るけど、ここはバリエーションだ。取り付きで迷うことも悩むことも、そこへ挑む者の義務であり権利だと思う。無論、設置した人はきっと無事故を祈り、善意で設置したことはよくわかるけど。
ほとんど雪のない藪斜面を登り尾根へ出る。しかし暑い。時節日が差す陽気の中で汗が滴り落ち、メガネが曇る。あち~よ、あちあち。2時間ほど登るとようやく涼しい風が走り抜け、東尾根の上部が顔を出す。いつ見ても陰険な様相を見せてると思うのは気のせいだろうか?
ニノ沢の頭でテントがニ張、第一岩峰手前の岩の基部で一張、先行パーティーがすでにテントを張りくつろいでいる。時間はまだ早いが、ココから先はあまりいいテン場しかないのできょうはココまでとする。折角なので適当な斜面に雪洞を作る。こういうのって時間があるとついつい凝ってしまいますね。2時間以上かけて雪洞疲れが・・・。
30日 4:20第1岩峰手前斜面~5:30第一岩峰基部~9:00第二岩峰基部
朝、雪洞から出ると星空が。うん、いい朝。まだどのパーティーも動き出してないようだ。さすがGW、かなり前のトレースのようだがしっかりついている。第一岩峰手前の雪壁は朝一番も重なり高度感もあって緊張する。第一岩峰の基部でロープを出す。2年前に登ったときは分厚い雪壁があったが、今回はさすがにところどころ岩が露出し、少しヤラシイ。左に膨らむようなラインでダブルアックスを凍った草付に打ち込み、時に潅木をわしづかみにしてグイグイ登る。60mいっぱいに伸ばして下降するとすでに次のパーテイーが準備していた。
第二岩峰に向かう雪壁の登高・トラバースもやはり緊張する。ロープを出すほどでもないが、堕ちれば100m以上滑落といったところか。ここで初めてまだ先行パーティーがいることに気づく。
3人組のようで、すでに最後の3人目が核心のチムニーを登っていた。ようやく第二岩峰の基部に到着したころから天気が崩れ始める。今日登りきって下山なら一度登ったルートだし、迷うことなく進むが、このあと初見で、しかも下降が待っているので少し様子を見る。後続2パーティーに先に行ってもらう。一つは男性2人組、もう一つは男女2人組。男女ペアは、男性が熱心に教えながら登っていたし、女性も一所懸命に応えていた。小雨が振り出していて、ツェルトをかぶっていたため、『お気をつけて』程度しか言葉を交わさなかった。
暫く待っていたが、埒があかなかったので男女ペアが登ったあと13:00ごろ動き出す。2年前と同様に核心のチムニーにてこずりながらなんとか突破し、もうすぐ岩峰の終了点というところで、なんと雷鳴が轟く。ヤバイ!稜線で金属だらけなんて落雷してくださいと言ってるようなもんだ。しかし、2年前にあったボルトのアンカーが見つからない。しかたなくアックス・スノーバー・デッドマンの4点で慎重にアンカーを作る。雷鳴であせらない。落雷は怖いけどアンカー破壊で懸垂下降失敗はもっと切実なリスクだ。なんとか下降し、基部に降り立つと同時に豪雨。
もうなんかの罰ゲームでしかない。幸い、朝一でココを登っていたパーティーが作った?スペースが基部にあったので急いでテントを張る。ほんの数分だがびしょ濡れで大変だった。時々、雷鳴と稲光がほぼ同時に切り裂く。たぶん雷雲の中だろうなと思いつつ、『ジタバタしても仕方ないよ、妹尾クン(笑)』というO内師匠が2年前の中国四川でのこれまた雷雲の中でのビバークで言った言葉を思い出しながらひたすら耐えた。
先行パーティーは大丈夫だろうか・・・。
これは後日談(下山後にネットで知った)になるが、ちょうどテントでびしょ濡れのまま雷鳴に怯えていた頃、鹿島槍ヶ岳南峰で男女2人組パーティーに落雷が直撃し、女性が一人亡くなった模様です。なくなった方のご冥福を祈るとともに、妹尾の横を通り過ぎた2人組でないことを心より祈っています。
夕方になっても、時々雷鳴が響き視界もほとんどないので迷うことなく今日はこのまま停滞。濡れたものを乾かすのに苦労した。
朝から風雨。ガスも立ち込め視界は悪い。こんな日ははっきり言って行動できない日でもないが行動したところで、疲労の割りに距離は稼げないし滑落や道迷いのリスクも増えるので少し考えたが停滞を決め込む。本来ならこんな人気ルートのど真ん中でテント張ると迷惑千万ですが、こんな天気なので通過者はなし。ラジオを聴いたり地形図を眺めたり昼寝してノンビリ過ごした。
2日 8:30幕営地~11:30鹿島槍ヶ岳南峰~13:30牛首山頂上
~16:00牛首山尾根1550m幕営地
夜も時節雨がテントを叩く音がした。昨晩の予報では天気は悪くはないはずと判っていても、やはり不安になりながら朝飯のラーメンをすする。やはり残雪期とはいっても、出発前のこの憂鬱な時間は相変わらず。でもこの緊張感もアルパインでは欠かせないスパイスでもある。
明るくなっても視界はなく、「あと30分出発を遅らせよう・・・」このセリフを何度繰り返しただろうか。しかし、8時過ぎると一気に視界が晴れ、急いで出発準備をする。気温が急激に下がったようで、昨夜の雨滴がすべてバリバリに凍り、テント撤収も一苦労。そしてアサイチで重い荷物を背負って第1岩峰をユマーリングしなければならない。傾斜が緩いので、逆に堕ちると大きく振られるので緊張する。2箇所ほど、空身でユマーリングして荷揚げしながらなんとか稜線へ飛び出す。
丁度その時、富山県警のヘリコプターが南峰付近を頻繁にホバリングしていった。北峰から南峰へ到着すると少なくとも二晩くらいはデポされたようなザック数個、南峰の頂上にあった。他人事ではないと感じつつ、気を引き締めていよいよ黒部横断の核心、黒部川への下降へ向かう。牛首山へ向かい始めてすぐに気づいたのは、意外とトレースがついていること。もはやGWの黒部横断は一般的なクライマーにとってはそこまでハードルが高い課題とはいえないのかもしれない。
天気は快晴で暑すぎるくらい、腐った雪が重い。途中腐りすぎて足が沈むので、ワカンをつける。しばらくいくと癒し系なブナ?の疎林が出てきて快適。16:00頃、適当に樹林の袂で幕営。今日は強風にも雨にも落雷にも怯えなくて済む。
3日 4:00幕営地~7:30旧関電建物跡地?~11:00S字峡
~13:00東谷吊橋~15:30ガンドウ尾根1050m幕営地
星空が輝く中、いよいよ黒部渓谷への下降。うまく吊橋へ到達できるだろうか・・・不安で仕方ない。ヘッデンの中、地形図・コンパス・時折現れるトレースを頼りに視界のない樹林帯・ヤブ尾根を下る。一度、前夜に地形図で注意しようとしていた、尾根が三又に分岐する点で気をつけていたにもかかわらず、支尾根に迷い込みかける。読図力もルートファインディング力もまだまだだと痛感、40分程ロスする。正解の尾根の折口には赤布があり、『ぷぷぷ~、ルートミスザマァ~、』とあざ笑われた気がしたと同時にちょっとホッとしてしまった。
暫く雪が途切れがちで所々泥壁や木登りが避けられないヤブ尾根を下ると、旧関電?の建物跡のような場所に到着した。あとは尾根を行くより、尾根の西斜面を下降したほうがよさそうと判断し、懸垂下降とクライムダウンを繰り返し、なんとか黒部川の河原に降りきった。懸垂は合計4P。
100mほど先に吊橋も見え、やれやれ、これで核心は終わった・・・と思ったら大間違い苦笑。まず吊橋に行くまでに、一度登り返して東谷の左岸に出る。ここで比較的新しい幕営跡地があった。さらに東谷を渉らないと対岸の吊橋に到達できないが、渡渉経験が乏しい上に雪解けで増水しており、とても単独で突破できない。過去のパーティーの報告にスノーブリッジがあったので、今回もそれを期待していた。案の定、東谷を100mほど戻るとブリッジ発見。しかしまたしてもブリッジに到達するまでに高巻きして登り返す。しかも下りは不安定な雪壁のクライムダウンとシュルンドの突破。結局、S字峡に降り立ってから吊橋に到達するまで2時間もかかってしまった。
もう精神的・肉体的に下降で疲労しきってしまったので河原付近で幕営も考えたが、まだ横断は半分来ただけなので、最後の一踏ん張りでできるだけガンドウ尾根を登り返すことにする。このころから少し天気が曇り出す。吊橋右手のルンゼをダブルアックスでドンドン登る。ときどき雪が不安定でパンパンのふくらはぎと疲労しきった体には相当に緊張を強いられる。技術的に難しくはないが、中途半端に凍った草付や木登りを繰り返す。少なくとも堕ちればかなりヤバイ。
2時間ほど登り返した所で、小雨が降り出し、これぞ良い口実が出来たとばかりにテントを張り、今日はココまで。谷の中なのでラジオも聞けず考えるのは明日の天気ばかり。
4日 3:30幕営地~12:00仙人池ヒュッテ~15:30池ノ平山手前2450m地点
朝、昨晩の心配をよそに星空が出ている。とにかく先に進もうと早朝出発。ここでも、ところどころ比較的新しいトレースを見かける。そうして2時間ほど進むと『・・・おはようございます』と、前方からいきなり声を掛けられた。よもやこのルートで人に会うと思わなかったので、昨秋の熊遭遇と同じくらいびっくり(笑)。
東京・三峰山岳会の3人パーティーさんが出発の準備をしているところだった。きけば五竜から黒部横断とのことで、頭が下がる。結果的に彼らのトレースに何度か助けてもらったので、今度はコチラの番と先を急がせて貰った。尾根上部に進むにつれて、ヤブは減ったが、急な雪壁に深いシュルンドが入って迂回を余儀なくされたり、シュルンドにスノーブリッジ状のデリケートな部分があったりと魅力的な雪稜ルートが続く。傾斜が緩くなるころには天気も快晴で早々に雪が腐り、時節スネあたりまでラッセルしながら登り続ける。ヘトヘトになりながら仙人池ヒュッテに到着。気温も高く飲料水を飲みきったので、最後の池ノ平山への登りの前にノンビリ休憩を兼ねて水作り。こんな癒しの時間は残雪期、それもGWならではだろう。
ここから見える剣はゲームで言えば最後のラスボスのように厚い雲を纏い、かすかに八ツ峰を見せるのみで容易にその姿を現さない。池ノ平山への登りでは既に二人組の先行パーティーが遠くに見え、またしてもトレースのお世話になる。一度コルまで下り、本日最後の登りは長く単調で、だからこそ疲れた体にはかなり堪える。10歩進んでは肩で呼吸しながら『もう少し・・・あの稜線の向こうまで・・・』とブツブツ喘ぎながらヨタヨタ進む。
ガスが沸いてきて、時節完全にホワイトアウト。地面と空の境界線すら全くわからないので危険ではないが、ひたすらトレースを追う作業は精神的にも辛い。高度計で頂上が近いと判断し、少し脇の斜面に幕営地を作り休む。ここまでで6日間の疲れがだいぶ溜まってきているが、濡れた靴下・手袋をコンロで炙りながら香ばしい臭いの中(笑)、明日の晴天を願って就寝。
5日 5:20幕営地~7:00北方稜線のコル~11:00剣岳山頂~17:00馬場島
風が時たま吹く程度で快晴の下、剣が眼前に姿を現す。今日はいよいよ北方稜線から剣岳へサミットプッシュ。天気も申し分なし。先行パーティーの苦闘が容易に想像できるトレースを追いかけながら進む。クラストして昨日とは違い、歩きやすい。小窓雪渓と合流するコルへの下降は先行パーティーがステップを切っていてくれたのと、雪も安定し草付もバッチリ凍っていたので慎重にクライムダウン出来たが、雪やメンバーの状態次第では懸垂下降は必須だろう。ロープを出すなら3~4P分くらいある?コルでひと休憩を入れていよいよ最後の北方稜線へ。先行パーティーは2パーティーいるようで、昨晩はこのコルで幕営したようだ。
これまた急な斜面を登る。途中、1Pほど簡単なアイス?っぽい部分有。ここもメンバーの力量次第ではロープが必要かも。稜線に出てからも急峻なアップダウンが続く。途中で、3人組パーティーが下降してきたところと出くわす。お話させて頂くと、大阪のぽっぽ会の方だそうです。歳を重ねてもまだまだ現役で北方稜線に来られる気力といい、マジかっこいいですね、カクありたいものです。
途中、またしても急な雪壁の下降あり。流石にココは1Pロープで懸垂下降。雪の状態によってはさらに1Pほどロープが必要かも。先行パーティーは稜線へ抜ける最後のルンゼを登っている。このルンゼがひたすら長い。もう太腿もふくらはぎもこれ以上なくパンパンなのに、一向に稜線が近づかない。それに傾斜もそこそこあるので気は抜けない。滑落すれば2~300mは止まらないだろう。心技体すべてを振り絞ってなんとか稜線へ。しかし、よくある話でここからまだ山頂は30分ほど要アルバイト。
快晴の下、360度白銀の嶺々が見渡せる山頂は格別でした。山頂には10人ほどの人がいました。大脱走ルンゼ(でしたっけ?)へ滑るスキーヤー・ボーダーもいたりなんとJECCの廣川健太郎さんも。少しお話させて頂くと
『玉谷サン、坂本サンは元気ですか?(ニヤリ)』 と・・・。
ヤバイですよ、天下の(?)ヒロケンさんに監視されておりますよ!玉坂サン!
スキーヤーの方々が世にも恐ろしい斜面を滑って行くのを見届けていよいよ最後の早月尾根の下降を開始。難所として名高いカニのタテバイ・ヨコバイをビビリながらも少し楽しみにしながら慎重に下っていきましたが、例年以上に積もった雪に埋まり、結局どこなのかよくわからないまま通過していたようです、ショボ~ン↓・・・。
樹林帯に差し掛かる頃には、雪は腐りに腐り、雪ダンゴは大安売り状態で、ヘトヘトの疲労の中、歩きづらくてしょうがない。最後のほうは30分歩いたら休憩という感じで文字通りヅタボロの状態(笑)で馬場島まで歩きました。馬場島のキャンプ場で管理人サンに許可を頂き、しかも親切に建物の軒下を提供して頂いて幕営。雪解け水の川で絶叫しながら身を清め(笑、勿論全裸にはなってませんよ)、余った食料をこれでもかと食べる。昨日までとメニューは変わらないけど、腹いっぱい食べられる幸せはなんとも言い難い。シ・ア・ワ・セ・ィ~!
6日 7:10馬場島~8:15伊折ゲート~9:45上市町駅
さて、今日はもう歩かなくていいかな・・・とのんきに考えてましたが、なんと今年は積雪が多いらしく、伊折までしか車が入れないとのコト。疲れた体にムチ打ってホントにホントの最後のアルバイト。1時間ほど歩いて伊折ゲートへ。呼んいたタクシーで駅へ到着。一週間ぶりのシャバ(コンビニ)の食べ物をこれでもかと買い込み電車に揺られる。途中、幾つかの駅では待ち時間が結構長く
完全に”ぶ○り途中下車の旅”状態。
特に糸魚川駅では、2時間近くの待ち時間の間、近くのスーパーで特売の揚げ物やら
サラダやらお酒を買い込み、駅から徒歩10分ほどにある海岸の展望台で平日の午後から
一人で快晴の水平線を見ながら酒盛り(笑)、何これウマすぎる~!!!
もはや黒部横断はこのフライと酒を味わうための準備運動に過ぎないといっても過言ではない。
そんなこんなで途中下車しては買い食いを繰り返し、しっかり体重を元に戻しましたとさ、メデタシメデタシ。
************************ 総括 *************************
ま、こんだけ長々と報告書いたのでいまさら要約もヘッタクレもないとは思いますが、一応。今年は冒頭で述べた通り、イマイチぱっとしない冬シーズンだったので、まあ、正当な冬山とはいい難いにしても、充実した山行となりました。
ヤブ漕ぎあり、木登りあり、雪壁あり、ナイフリッジあり、凍った草付あり、クライムダウンあり、懸垂下降あり、読図・ルートファインディングあり、岩あり、ピークハントあり・・・・悪天とラッセル以外の要素がすべて味わえた贅沢な山行、最高でした。もっとも、悪天とラッセルこそが冬山で一番大事なスパイスなのも事実なんですが。勿論、下山後のお酒&ツマミも最高(笑)。
しかし・・・これを厳冬期にやろう(もしくはやった)なんて・・・もう完全に頭がおかしいですね、変態です。妹尾ですか?もちろん変態ですよwww。来年は難しいにしても再来年当たりどなたかいかがですか?それまでしっかり登らないと。これで心置きなく岩シーズンに突入できますね。