題名からして、物騒ですね。
著者は御存知、中高年登山教の教祖:岩崎元郎氏。
「登山業界で社会的に成功したのはR.メスナーと岩崎元郎だけだ」
なんて話もあるとかないとか・・・。
ま、近場の図書館にあったので借りてみました。
発行日が2003年と、今から10年近く前なので
現状とはやや異なりますが、基本的な内容としては
当時の中高年登山者に散見された、残念な実態について
辛口批評が中心。
読んでいて強く感じたのは、岩崎氏が自分の持つ発言力・影響力を
非常に意識して執筆されている点です。
自分の発言力・影響力を前面に押し出してモノを喋ると
一歩間違えれば「天狗になってんじゃね~YO!」と周囲から批判される危険性も
孕んでいますが、(特に登山業界では・・・苦笑。事実、本書あとがきで、
「あっちの山こっちの山で、フクロダダキにあうのではなかろうか、
という懸念がないわけではない。」と本人が愚痴ってるぐらいですんで。)
それでも、敢えて辛口を貫くあたり、中高年登山者に対する自分の立ち位置への
責任感が強く伺えます。
例えば、第10章で、著者がNHK番組『中高年のための登山学』にて紹介した
ストックについて、「テレビの力はスゴイと思う一方で、そこで発言する自分の
立場の怖さというものを、僕は痛感した」というほど、それまで比較的マイナーな
装備だったストックが爆発的に普及したこと、そしてアプローチ(公共交通機関内など)
でのストック収納に関するモラルや、何よりストックを使いこなせていない
登山者の増加に対して、苦い思いを述べています。
基本的に、登山・クライミングの世界では『現役』こそが主役であるし、情報を
発信すべきだと思いますが、そうした場合の多くは自分のことを
『いち登山者、いちクライマー』という立場で発言するので、良く言えば謙虚、
悪く言えば世間への影響に無関心な発信になりがちです。
そういう意味で、面の皮が厚い自分の立ち位置・影響力を良く理解したベテランの
発言は、現役とは違った趣があり、たとえ登山の中で自分とは違う分野ではあっても
これから新人を教えていくような立場の登山関係者には一読の価値ありかなと。
また、これから登山に深く関わっていこうという新人の方も、
本書で出てくる「それはね~よ(笑)」的な残念例を反面教師にしたり、
あるいはこれらの残念例の根本的な原因に潜む、『ヤマへの姿勢』について
非常に勉強になるお言葉もチラホラなんでドウゾ。
そもそも、本書に出てくる残念な中高年登山者だって、好きで残念な模範例に
なっている訳ではなく、『自分が残念なことに気づいてない』だけなんですね。
だからこそ、自分の状態に『気づく』ためにも、クライミングの技術本とか
ルート図集ばかり眺めるのではなく、こういった本も読んで欲しいな~
と感じてしまうのでした。
尚、最近はとんと御無沙汰でございますが、当会顧問にして
詐話師氏(詐欺師ではありませんよ笑)こと柏瀬祐之氏の一言も
ちゃっかり載っちゃってます。(最近まつどに入会された新人諸君、
とってもエライ人なので、名著『山を遊びつくせ』は必読です。)
『山岳雑誌で山小屋関係者の座談会があったとするでしょ。
ひとりが「風呂はないの、なんていう登山者がいるんですよ」と発言、
すると別のひとりが「そうそう、浴衣はないの、とかね」ときて
つぎに(笑)とくる。困った登山者と切り捨てて座談会は終わっちゃうんだけど、
それじゃ登山界がよくなるわけがない。彼らは知らないんだから、
教えてあげなくちゃいけないんだ。』
最近、まつど岳人も各自多忙ですが、山岳会の「教育的」活動も
出来る範囲・細々でもいいので、なんとか続けていきたいものですね。
なんせ、自分たちがそうやって育ててもらったんですから。
岩崎元郎 著 日本放送出版協会 出版 定価714円(税込)
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